新・碁の方程式

囲碁理論の要点

1 仮説の条件

【条件1】
式1 地の価値= 地の大きさの価値 + 石の損得の価値

【条件2】 地の価値の公式は
式2 地の価値= 地の可能性 × 地の確定率

【条件3】効率差は自由性や偶然ではなく、必然性によって生まれている。

【条件4】効率差は、「勝敗ルール」「着手ルール」などの囲碁の基本ルールから考察する必要がある。

これら4つに条件をどのような解釈し、推論すべきかが、ここでの研究テーマになります。結論としては

@ 確定地の効率 ≒ 地の確定率

A 地の確定率 ≒ 石を取るの能力

B 石を取るの能力 ≒ 攻める能力

C 攻める能力 ≒ 棋力差

であるといます。さらに勝敗に大き影響する棋力差としては、「先手」もしくは「連続手」を生成する能力差であるといえるのです。そして、「石を取る」「生きる」「地を制限する」「地を囲う邪魔をされない」などの能力が戦いの基本能力であるといえます。

2 推論の法則条件

結論に導くための「制約条件」には、

法則1 後手の戦いでは、形勢差が生まれない(大公のまね碁)
法則2 目的達成には効率差がある。
@ 石は簡単に取れない。
A 地は、単純に囲えない。
法則3 連続して打てないルールがある。
法則4 複数同時の戦い進行。

などの効率条件を満たす必要があります。

3 9つの価値変化との関係

「条件4」の囲碁ルールから生まれる4つの基本価値から、確定率への価値変化を明らかにしています。

基本価値 「自由性」「危険性」「確定性」「可能性」

関連価値 「関連性」「安全性」「効率性」

確定率 「必然性」「連続性」

結果として

  1.  確定地とは、「死の確定頭域」と定義できる。
  2.  戦いの効果と目的とは、互いに石の連結を高め、生きる効率を高めることである。

2 領域の概念と攻めの構想

1 領域の法則

争いの基本単位は、
空点ではなく、領域の争いになる。

法則 領域の境界は、生きた石同士の境界しか存在できず、

  1. 生きた石と生きていない石の境界
  2. 生きていない石の同士の境界(セキ以外)

存在できない。

これらのことから、活きる領域の判定能力が問題となる。盤上に存在するためには、最低限の生きの領域確保が必要であり、活きていない石の境界がいつも戦いの争点となっている。生きた石同士の境界はダメ場であり、ダメ場は争点にならない。

2 攻めを基本とした構想

(1)攻めのターゲット

生きを制限する戦いでのターゲットとなる基本単位は、空点という点ではなく、活きるために必要な連続した空間領域である。

(2)攻めの効果

勝負に勝つためには、攻めることが必須であり、攻める行為によって得られる確定効果とは、相手の地の可能性を制限することによって、自分の地の可能性を確保し、相手から制限させないことがで可能になるためである。これが「攻めながら守るという」効果になる。このような効率が生まれるのは、攻める戦いによって得られた境界部分の連結が強くなることで、相手から切断の危険性を防止できる勢力領域を確保できるためである。

3 戦いの構想(基本構想)

攻めの基本とは、活きられない領域への制限と分断である。
つまり

  • 第一の制限は、生きる空間領域を狭める。
  • 第二の制限は、生きるための眼形を制限する。

がなされ、

  1. 小さく生きさせる。
  2. 小さく地を囲わせる。
  3. 領域2つに分断する。

ことも攻めの動作になる。

4 生きの領域を分断する構想

生きなければないない領域が6つ以上に分断されると、その一つの領域での生きは非常に困難になることがわかっています。また絡み攻めによる、生きる領域の分割によって、生きを厳しく制限する戦いとなるのです。

5 隠れた天元の戦いへの構想

四隅で生じた、複数同時進行の戦いは、天元での戦いによってその効率が完成し、もっとも分断数の多い手順の難しい戦いになります。また戦いに結果生まれた天元の厚みは、その後寄せの戦いとして碁盤全体に影響するため、この天元の戦いが、勝負として天王山の戦いになるといえます。

3 3つの価値 制限、確定、制約

1 2つの価値(制限と確定)

@ 制限価値… 地を囲わせない、生きさせない
相手を制限する価値。
A 確定価値… 地を囲う、生きる、
状態を確保する価値。

(1)攻めの優先意識

攻めの優先意識とは、制限価値を高めると同時に、確定価値を高め、戦いの優位性(可能性)を高める動作のこと

(2)隠れた制約

「天元の戦い」と「絡み攻め」がある。

2 新たな制約

損失と消滅の回避による価値から
先手(必然性)という制約が生まれる。

  1. 損失回避
    石が取られることで生まれる
  2. 消滅回避
    可能性が無くなることで生まれる

3 確定率への影響

必然性という新たな制約価値の誕生によって、
確定率に差が生まれ、効率差が生まれる。

ゲーム理論として隠れた必然法則

1 有名なミニマックス法

ゲーム理論には、有名なミニマックス法という戦略があります。これは、「想定される最大の損害が最小になるように決断を行う戦略のこと。将棋、チェスなどといった完全情報ゲームでの、ゲーム理論、次の手を選択する場合に利用される。と書かれています。完全情報ゲームととは、偶然がないゲームであるという意味です。このことが囲碁もあてはまるのです。

2 囲碁が地を囲う効率を競うゲームとなる理由

「囲碁は地の大きさを争うゲームである」という理由は、

  1. 1手で得られる利益より、一手で失う損失が大きい
  2. 成功するうり、失敗しないことが最優先で打たれる。
  3. 地を囲うことで得られる利益より、石が取られる損失が大きい。
  4. 石が逃げる代償として、相手に地を与えることになる。

ことになるのです。このことはヨセの終盤になるほど顕著に現れます。

3 着手効率とは、

ミニマックス法から、着手効率の次の狙いとして成立する条件があることがわかります。それはその手に

  1. 2つ以上の着手価値があり見合い状態になっている。
  2. 打った石が、無条件に取られることはない。
  3. 相手が得られる損失回避の価値は最大であり、こちらが得
    られる価値より大きい。

4 次の狙いには、2つの条件がいる。

(1)4つの基本動作の2つが必要

次の狙いとしての成立要件では、

  1. 相手の地を減らす。
  2. 自分の地が増やす。
  3. 相手の石を取る、
  4. 自分の石が生きる。

の4つの基本動作の内、2つの目的動作が必要になります。

(2) 基本動作の準備動作

着手としては、この4つの基本動作を確実にするための予備動作も含まれます。それは、「覗き」の手を打ち継がせることを意味します。このことで、「覗いた手」を逃げるまたは取らせる手が生まれます。

このテクニックが、相手の地を制限する手になり、本来後手であった手が、先手にかわる手になるのです。

5 メンナンスの手が損失回避の最大手になる。

ヨセなどで、捨石によって後手が先手になる理由は、

法則 石を取ろうとしたり、地を囲うとすると、単純にその目的変更ができない。

これの効率法則として存在し、目的達成のために継続して必要となる損失回避の手をメンテナンスの手とよぶことにします。つまり、メンテナンスの手が生まれると、片方のみ受ける義務が生まれ、相手の先手を与える結果になるのです。

4. 勝ちながら強くなる。

1 従来の考え方とは

基本式 形勢 =Σ領域ごとの価値(確定地、勢力地、厚み、取った石、未確定)の部分的な価値の合計値として、勝敗における形勢判断を従来行っていました。そして、この価値観には、おおきな問題点と矛盾が内蔵していました。それは、

  1.  個々の確定地を大きくする、
  2.  全体の確定地を大きくするために修正する。

という複雑で矛盾する、着手価値、着手効率の考え方があったのです。その結果「定石を覚えて2目弱くなり」という格言が生まれたのでした。

2 従来の考え方の部分訂正

この矛盾した考え方を修正する目的で、「定石の勉強では、定石の手順をおぼえることより、その活用が重要である」という指摘を多くの専門書で記述されるようになりました。

しかし、基本式による形勢判断の方法は、「勝ちたいという思い」と「石が取られる」という恐怖がつきまとい、その結果、勝つための安全思考を生み出し

  1. 地を囲って勝とうという意識、
  2. 相手の石を取ろうとする意識

を消すことができなかったのです。

3 さらなる意識の部分修正

石が取られる恐怖と勝ちたいという欲望を消すために

  1. 厚みは囲ってはいけない
  2. 両空きスミは囲っていけない
  3. 取ろう取ろうは取られのもと
  4. 後手の先手

という格言が生まれ、さらに戦いを重視すべきという考えから

  1. 大場より急場
  2. 厚みを攻めに働かせ

という格言も生まれました。しかしこれらの言葉では、まだまだ
「対局しながら強くなる」「勝ちながら強くなる」「考えることを楽しみながら強くなる」「構想するゲームを楽しむ」という究極の対局意識を与えることができなかったのです。「碁は、人間である以上着手ミスは避けられない」という法則があり。このため結果として、初級時代に勝てた一部の人だけしか、囲碁を趣味として続けられない状況になったのです。

4 180度真逆の新発想への転換

勝ちながら強くなるには、従来の考え方を180度転換し、ほとんど捨てることが必要だったのです。それは、戦いにおいて重要な意識は、

  1. 石は取る必要はない。
  2. 地は囲う必要はない。

という知識であり、

  1. 攻める意識
  2. 相手の構想を制限する

意識だったのです。つまり、相手を生きにくくすることで、
「攻めるながら守る」という理想形が生成され、自然と有利な形勢となり、先手になる権利が得られ、勝負に勝つことが可能になることがわかったのです。