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新・碁の方程式 まとめ

形勢判断と構想

1 形勢判断の基本計算

形勢判断の目的は、その結果から、今後構想を修正し、決定することが、目的になります。形勢が不利な場合には、形勢逆転の勝負手を打つ必要があるからです。

形勢の判断には、「地の囲い合いでどちらが有利か」によって判断されますが、それだけではなく、形勢逆転の勝負手を検討することが重要になります。

2 勝負手の選択

形勢が有利な場合は、勝負手を阻止する最適方法が検討され、形勢が不利な方は、勝てる可能性の高い勝負手を選択します。

勝負手の選択においては、形勢判断の結果と状況によって変化し、「相手の石が取れると勝てる」「地を減らすと勝てる」「地を増やすと勝てる」「乱戦にすることで、逆転のチャンスを得る」の4つの中から選択することになります。

3 勝敗確定の有無

勝負にとって、逆転がおこらない状態、勝負手そのものが無効な状態を、勝敗の確定状態といいます。このため、勝敗確定が起っているか起っていないかが、形勢判断の重要な項目になります。勝敗の確定が起っているとは、形勢が大差であり、相手に攻めるべき弱い石がない状態をいいます。

つまり、どう打っても逆転できない状態をいいます。

4 棋力による有効性の大きな差

棋力の高い人同士の対局の場合には、形勢判断の必要性が大きく、大いに逆転の可能性がある場合が多いのですが、置碁などの対局で、棋力のはなれた対局では、下手の形勢が悪い場合には、逆転の可能性がほとんどなく、50手ですでに手遅れになっている場合の数多くあります。

この理由は、形勢判断の方法と目的が、基本的な戦いを前提とした戦いであるため修正できないことが最大の原因になっています。つまり、棋力の低い下手の構想は、戦いの構想ではなく、直接地を囲う構想になっているため、失敗した場合にも、構想の修正が困難となります。

5 構想で優先する戦略と形勢判断の計算方法とは違う

このような方の形勢判断は、地を囲う計算方法の重視から、形勢判断の結果から形勢逆転が出来ない状況になってから、形勢逆転を狙う考え方になっています。

弱い人の対局意識は、囲碁とは、単に地を囲うゲームを競っていると勘違いをしています。徐々に強くなると、対局のでの、先手後手、特に先手の権利の重要性を気づくことで、着手の必然性の戦いによって地の効率を高めるという感覚で打つようになります。そして地の増減は、戦いの結果起り、地になるという意識で戦っています。

6 地を囲う効率は、地を増やす意識ではない。

強い人の地を囲っているいように見える手の目的は、地を直接囲う目的ではなく、地になる可能性を保持することで、相手の地を制限し、有利な戦いを得ることが目的で打たれています。つまり形勢の優位性を、勢力地の大きさで保持しようとしているに過ぎないのです。それは戦いの中間的な評価であり過程であって、最終目的となる地の成果ではないのです。

7 形勢判断により構想修正が必要な理由

囲碁での勝敗決定の原因は、構想によって得られる成果より、失敗によって失う損失が大きいことがあります。このため、大石が取られるという大きな失敗をすると、負けになることがおこります。

このため、大きな失敗をしない意識と工夫が必要になります。その判断材料として、形勢判断の知識と技術が重要になります。

序盤での失敗の多くは、確定性が小さいため、勝負への影響は小さいものとなります。逆に終盤での失敗は、多くが勝負に大きく影響するものになっています。

8 攻める意識が継続されることで形勢は有利になる。

序盤における失敗の危険性を低下させる考え方が、「攻める」という意識であり、「攻めながら守る」という意識になります。このため「攻める」という意識から生まれた結果、形勢において良結果を導くことになり、攻めている状態になっているかの認識が、形勢判断の最も重要な基本能力になっています。

9 攻めた結果の判断

「攻めた」結果は地の大きさではなく、石の強さ、将来への有効性つまり厚みの評価として、認識されています。厚みの評価は、将来、中央で起る戦いの予想価値になります。厚みの評価の正確さは、厳密な確定はしていませんが、確定できない状況であっても、形勢が有利かどうかの判断が可能だからです。

また厚みの働きとしては、攻める利益は小さく、失敗した時の損失は大きくなるため、「攻める」ことで生じる危険性を緩和し、失敗した場合の損失を軽減させる働きがあります。

10 形勢判断の基本姿勢

構想において、相手への地の制約を優先することで、たえず形勢判断を意識した構想選択をしていることになります。また攻めの意識と選択によって、打ちすぎへの補正や修正が不可欠になります。

このための「形勢判断の活用」という考え方が重要であり、形勢判断そのものが構想と同し価値観によって反映されたものであるといえます。

11 まとめ

「攻める」「制限する」という対局意識、このことで生まれる効率と着手ミス、そのミスの修正方法、相手の自由性を制限することで得ようよとする連続性、必然性の成果、それを活用することで地の効率を高める考え方、これらのことと、形勢判断の計算方法と、構想の修正、優位な地の可能性、形勢が有利な場合の勝ちきる方法、不利な場合の逆転の可能性、これら一連の戦いのでの考え方は、すべて関連したものであり、序盤だけ、中盤だけ、この場合はというような部分的な考え方は、好ましくなく、部分での効率は、例外的で他に影響のない独立した価値として活用すべきであるといえます。