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新・碁の方程式 まとめ

9つの価値(ゲーム特性)

囲碁理論の体系を理解するには、囲碁ルールそのものから生まれる効率性(法則)や制約条件の考察が基本になります。最終的な地の大きさは、下記の基本式で表されます。

1 ゲームルールから生まれる効率

囲碁の最大の特徴は、「どこにでも自由に打てる」と、「打った石は動かせない」、「白黒交互に打つ」「石が取られる危険がある」「碁盤は、正方形である」という5つのルールから構成されています。

これらのルールから理想形と制約するという効率が生まれています。理想形としては、碁盤の形が正方形であることから、場所、形の効率が生まれています。また石の取り取られから、「打たれた石は取られない」「「地を囲うより囲わせない方が効率いい」という目標達成の効率が法則として生まれています。この法則はについては「碁の方程式 基本編」で説明しています。これらの結果から、

自分の構想を実現するより、相手の構想を阻止する

方が効率がいい効率の基本法則が生まれます。つまり、着手効率は、

相手の構想を制約し、自分の構想は制約されない

ことによって生まれ、効率の獲得チャンスは平等であるため、相手の理想形、自由度をより阻止できるかで、相対的な効率が生まれているのです。地の大きさは

<基本式>  地の大きさ = 地の可能量 × 確定率

あらわすことができますが、この確定率は、相手への制約から得られた「先手の権利」の数によって大きく影響します。

ゲームルールから生まれる「効率」には、「場所」「形」から2つの理想形 が生まれています。

1 場所の効率…
隅、辺、中央の順序で、選択される。
2 形の効率……
地として形は、正方形がもっとも効率がよく、正方形から 遠ざかった長方形になるほど、効率が悪くなる。

1 基本ルール

代表的な碁のルールとしては、

  1. 禁じ手以外、どこにでも自由に打てる。
  2. 打った石は動かせない。
  3. 白黒、交互に打つ。(連続して打てない)
  4. 生きた石は取られない。 
  5. 囲まれると石は取られる。

などがあります。
手順の進行にともなう代表的な状況変化は、

  1.  盤上に石数が増える
  2.  地として囲える空間が狭くなる

という2つの事象があります。

    ↓

2 目標達成の効率法則

目標達成より、阻止する方が効率がいい。

  1. 石を取るスピードより逃げるスピードが早い。
  2. 殺すスピードより生きるスピードが早い。
  3. 地を囲うより阻止するスピードが早い。

などがあります

2 9つの価値

<基本式> 地の大きさ = 地の可能量 × 確定率

この基本式における、「地の可能性」と「確定率」の項目は、9つ価値と大いに関係があります。

 9つの価値を、右で簡単に説明します。特に重要な特性は、手順の進行で変化する「危険性」「確定性」「可能性」の3つです。この3つは、「安定性」「関連性」という効率価値によって「必然性」「連続性」という最終価値を生み出すことになります。「見合い」の効率も、囲碁ルールにおける「連続して打てない」「置いた石は動かせない」ルールから生まれた効率になります。

3 効率の条件(制約と先手の権利)

効率は、自由を制約する価値として生まれることから、自由という効率を制限する目的の戦いが始まります。相手の構想をいかに阻止するかが優先され、相手の「着手の自由」、「構想の自由」を奪う戦略が立てられます。また、理想形という効率がある場合には、同様に相手の理想形を阻止しながら、自分は阻止されないように戦うことになります。そして「先手の権利」を得ることで、効率よく地を囲うことが可能になります。

囲碁では、着手の自由性から、本来はすべて手は後手であり、先手になることはありません。先手を得るには、相手の石を「生きなければならない」「取られては負ける」という状況に追い込む必要があり、「囲めば石が取れる」「生きれらないと石が取られる」というルールによって、先手を得ることが可能になります。

9つの概念

9つの価値と制約条件の内容を簡単にいうと

  1. 自由性…着手、構想が自由に選択できること
  2. 危険性…石が取られる危険があること
  3. 可能性…地として囲える空間があること
  4. 確定性…生きた石は、絶対に取られないこと
  5. 安定性…見合い条件で、戦いが停止すること
  6. 関連性…複数の戦いが、同時に進行すること
  7. 必然性…この一手の手しか、選択ができない状態のこと
  8. 連続性…2手連続して打てると効率があがること
  9. 効率性…碁盤の形や場所によって効率が変化すること

制約条件… 危険回避の条件があり、先手の権利が生まれること

などになります。

構想においては相手の目的阻止を優先され、相手の「着手の自由」、「構想の自由」を奪う戦略が立てられます。

  1. 必然という制約がある場合に、その制約を解除する。
  2. 自由性という効率がある場合には、その効率を制限する。
  3. 理想形という効率がある場合には、その形を得る。
  4. 先手という効率がある場合には、その条件を獲得する。

4 4つの価値グループと構想目的

9つの価値は、基本価値、手順価値、関連価値、勝敗価値の4つのグループにわけることができます。

構想目的は、勝敗価値となる価値、「必然性」「連続性」を獲得し活用することで、大きな「地の確定率」を得ることにあります。その手順は、相手の自由性を制限しながら、自分の地の可能性を保有することで、有利な戦いによって、「地の確定率」を高めることにないります。

5 3つの価値の優先順序

9つの価値は、「基本価値」を効率の初期条件として、「手順価値」の影響を受け、絡み攻め、見合いなどの「関連価値」を活用することで、「勝敗価値」を得る戦いが展開されています。「勝敗価値」を得るには、「石を取る」「死活」「攻め合い」という石の損得のるルールによって着手が制約され、これらの制約は「攻める」という手段と構想での制約条件の3つの組み合わせ「自由の制限」「地の制限」生きの制限」と活用によって、地の効率へと質的に変化させる戦いを展開しています。

@ 基本価値 …  自由性、効率性
すべての手、平等に存在する価値です。
A 手順価値… 確定性、可能性、危険性、
手順の進行によって変化する価値です。
B 関連価値… 関連性、安定性 
見合い価値によって生まれ、構想の争点になります。
C 勝敗価値…必然性、連続性
相手の邪魔を阻止し、効率よく地が囲える権利になります。

9つの価値の関連図

6 9つの価値の概要

9つの価値について簡単に説明します。

「自由性」とは、どこにでも打てる「着手の自由性」と、自由に構築できる「構想の自由性」を意味しています。この自由性は、黒白平等に存在しており、この自由性を制約することで、効率が生まれています。
「効率性」とは、碁盤の形や大きさによって地を囲う効率、石が取られる危険性に差があることをいいます。地を囲う場合は、四隅の場所に正方形の形で地を囲うと、もっとも少ない石数で大きな地が囲えることになります。また生きる場合も、隅の方が中央より少ない石数で生きることが可能になります。

「可能性」とは、地を囲う効率のことで、可能性は序盤ほど大きく、手順の進行で空間が狭くなることで、その価値は減少し、およそ100手を過ぎる段階で、ほとんどゼロになります。

「確定性」とは、これも囲碁の最大特徴で、生きの確定、死の確定、勝敗の確定の3つが特徴的です。生きの確定では、一旦確定した状態になると、石が取られない限り死ぬことがないといえます。つまり、後戻りできないため、逆進性のない特性のことです。この特性は、一旦碁盤に置いた石が、動かせないルールによって生まれています。

「危険性」とは、石が取られると損失が生じ勝てない状況になることをいいます。危険性は用心さえしていれば、損失を回避することが可能ですが、回避において他の代償を強いられることが生じます。つまり3子に石を逃げることで、相手に1目の地を与えることになります。危険性は、関連性による絡み攻めによって、取られる危険性は一気に増大することがあります。

これらの5つの特性は、黒白ともにいつも平等の確率で起る特性であるため、相対的な地の形勢差は、関係のない価値といえます。

(1) 自由性

ルール:禁じ手以外、どこにでも打てる。
定 義:どこにでも、打てること
作 用:着手と構想の2つの自由性がある。

(2) 効率性

関 連:地の効率は、複合的な価値の関連によって生まれる。
定 義:手順進行によって、複数の基本価値が変化することです。
作 用:場所的な効率、形による効率、連打による効率、好点への先行に効率、厚みを活かす効率など、数多くあります。

(3)可能性

ルール:@ 石は動かせない。A 対局開始時点では、盤上に石はない。B 黒白交互に、盤上に石を置く
定 義:地として囲える大きさの価値が減少する。
作 用:盤上に石数が増えることで、空点の領域が減る。
形勢判断では、地の囲い合いで勝てるかの判断が基本になる。勝てる場合は有利、負ける場合は不利となる。

(4)確定性

ルール:生きた石は、取られない。終局までに、すべての石は生きなければならない。
定 義:完全に生きた石は、取られない。(状態が変化しない)
作 用:確定しなければ、価値の評価ができない。

(5)危険性

ルール:必然性と同じ
定 義:切断点が生まれ、石が取られる危険な状態になること
作 用:攻めることで生き難くさせると、危険性が増大する。

「安定性」とは、見合い条件によって生きた状態とてみなせることで、戦いが一時中断することをいいます。成立した、見合い状態は必ず崩れる危険性があるため、安定性が崩壊するとまた戦いが再開することになります。このため安定性は、確定した生きのの状態と比較すると、非常に不安定な状態であり、絡み攻めにされる危険な状態であり、攻めのターゲートとなる最大要因であるといえます。

「関連性」とは、複数の戦いが同時に進行する状態をいいます。その原因は、安定性によって生まれ、戦いが一時中断することが原因しています。また天元付近の戦いでは、3つ以上もの戦いが同時進行することも珍しくありません。中央での戦いでは、その成果として大きな厚みができると、その影響は広範囲となるため、形勢に大きく影響することになります。

「必然性」とは、形勢にももっとも影響する価値であり、この価値を獲得し、上手く活用する能力が棋力であるといえます。必然性が生まれる条件は、負けるという「勝敗の確定」が、大きく関与し影響しています。なぜなら、効率が悪く打ちたくない手であっても、負けが確定する場合には、絶対に回避する条件が生まれるからです。必然性という特性が生まれると、地の効率や差が生まれることになります。

「連続性」とは、必然性が、関連し連続した状態になっていることをいいます。連続性が生まれると、非常に効率のよい地が生まれたり、生きられない状態の石でも、生きることが可能になります。 

「必然性」と「連続性」は、戦いの結果得られる大きな成果であり、この2つの価値を得るために構想が立てられているといえます。

「安定性」と「関連性」は、中盤以降ての、新たな争点を見つける条件になっています。なぜなら、絡み攻めによる戦いでは、見合い状態を崩壊させることが前提条件であるためです。この危険性を回避し、見合い状態からの影響のない確定した状態にすることは、構想の主目的であるといえます。

(6)安定性

ルール:交互に打つ(二手連続して打てない)
定 義:「見合条件」によって、生き完全に生きた状態とみなせる状態になる
作 用:一時案安定であるため、安定性が崩れると絡み攻めの原因となる危険があり、攻めの標的となります。

(7)関連性

関 連:「石を取る」「地を囲う」ことへの効率から生まれています。
定 義:戦いは四隅で生まれ、安定性によって一時停止するため、複数同時の戦いが生じことをいいます。
作 用:生きる、取る、地を囲うなどの目的を達成するためには、複数の石が必要になります。同じ石数であっても、その配置によって達成効率に差が生まれます。

(8)必然性

ルール:囲まれると、石が取られる。生きられないと、終局時に石が取り上げられる。
定 義:生きる目的が優先され、自由には打てない。
作 用:取られると損失が大きい。

(9)連続性

ルール:交互に打つ(二手連続して打てない)
定 義:利筋や先手が連続して打てることで、地を囲う効率が良くなること。打ち込みや攻め合いにも影響します。
作 用:2手以上連続して打てると、「地を囲う」「石を取る」などの着手効率が飛躍的に高まります。