対局しながら強くなるための対局意識

はじめに

対局意識の重要性

今まで、「勝負に勝つための心得」として書かれた本は数多くありますが、これは「失敗しないテクニック」であり「失敗しない意識」の注意であって、新たな碁の本質に気づくための本ではありません。

この本の発行には、前提条件として研究発展が必要でした。それは、碁の本質の解明として「一手の着手効率」というもっとも基本となる理論に関する研究の解明でした。一手の価値とは、どのような価値のことであり、序盤から終盤にかけて、その価値がどのような形で変化するかについて研究が必要だったのです。

アマが囲碁を趣味として楽しむ目的としては、「碁の本質とは何か」を気づく楽しみがあり、対局においては「自分が強くなっていく体験を実感する喜び」があると思います。また、「自分が強くなれた理由の発見」によって、今まで見過ごしていた法則の発見、つまり、すでに数多くの本に書かれていた些細な記述内容が、実は非常に重要な事であった事への「気づき」もまた、大きな楽しみの一つであると考えます。

これらの気づきは、自分が上達していく体験とあいまって、囲碁の本質への興味を進行させ、定石などの知識に関する活用の広がりをもたらし、上達する喜びであると同時に、学習の喜びと変化させるものであると思います。

ここに書かれた対局意識は、対局において常に心がけることで、「定石がどのようにして生まれたのか」、また布石には、どのよう争点が内在しているのか」、また中盤での戦いとヨセでの戦いの違いは何か」、などの理由が、対局という体験を通じて、自然にわかるようにまとめられています。そして、この発見できる基礎能力を才能として育てることが、本書の最大目的になっています。


対局意識とは、対局しながら強くなる意識のことです。つまり、対局によって、上達するための数多くの知識と体験を得ることができる方法のことです。上達できない最大原因は、この対局意識の欠如によって、対局における学習に無駄が生じているといっても過言ではありません。それでは、上達する対局意識とはどのような意識であり、なぜその意識が重要であるのかを考えてみます。

1章 4つの場面における、合計9つの意識 がある。

A 構想での先手後手を意識する。(すべてに共通)

囲碁での着手はすべて後手が基本であるため、相手の手に対しては、「基本は手抜きし      

他に他の大場に先行する」ことが基本となります。このため、「相手が手抜きした場合」には「手抜きの対応」と「手抜きさせない対策」の2つの知識が必要になります。

1 次の狙いを想定する「手抜きの読み」を意識する。

相手が手抜きした場合には、次の狙いの想定が問題となります。つまり次の「狙いの攻め」によって、相手に手抜きさせない手が「手抜きの読み」になります。

2 相手に手抜きさせない状態にする、必然の読みが重要。

「相手が手抜きできない状態」とは、「手を抜くと、勝負に大きく影響する重要な大石が取られる」という事態が生まれる場合に、相手は手抜きできない状態になったといえます。

3 「生きの制限」から生まれる、「地の効率」を活用する。

相手が手抜きできない状態となることによって、「活きの制限」が生まれ、このことから戦いにおける必然的な手順が生まれ、構想の制約条件となる。この制約が、着手の連続性として地の効率に大きな影響を与える。

 <死活と攻め合い>

相手の手に、必ず受けてばかりいると絶対に勝つことはできません。相手の手に対して、状況を適正に判断して「手抜きをして大場に先行する」ことが勝つために絶対条件になっています。このため、受ける必要がないと判断した場合には、手抜きをして大場に先行すことになります。大場への先行判断が間違った場合には、重要な大石が取られたり、取られる危険性が生じます。このため、手抜きができるかの判断力は重要で、その養成には、「死活」と「攻め合い」、またそれに関連した「手筋」を学ぶ必要があります。「死活」知識を学ぶことで、「手抜きしても、自分の石が取られない能力」と「手抜きした相手の石を、取れる能力」が養成され、これが囲碁における基礎能力になります。

B 形勢としての、「地の可能性」の制限を意識する。(序盤)

勝負に有利な「地の可能性」のバランスとは、自分の地としてか囲える場所を保持し、相手の地になる可能性の場所を減らすという事象になります。この目的を達成するために、「大場に先行する」手が打たれ、模様を広げる手が優先されています。これらの手は、確定地を直接増やす目的の手ではなく、確定地になる可能性を保持し、有利に戦う状態にする手であるといえます。つまり、有利な戦いのために、互いに相手の「地の可能性」を制限しあっているのです。

4 相手の地を制限する手が優先する。

石数の少ない序盤であればあるほど、相手の地を制限する手が優先されます。その理由は、相手の地を制限する方が、自分の地を制限されない手より、一手の価値が大きくその反面、攻められた時の損失が大きいためです。このため、序盤であればあるほど、相手からの反撃の威力が小さく、反撃された場合の対応においても余裕があるためです。

5 自分の地の可能性を制限されない手を打つ。

地合いのバランスとして優位性が大きい状態、つまり地の囲い合いでも、勝てる可能性があれば、構想を立てる選択枝が広がり、「相手の構想をみて、その構想に対応することができる」ようになるからです。

C 中盤以降での戦い、中央の戦いを重視する。(序盤から中盤)

 戦いの予想手順は、地の可能性の場所を確定地にする予想手順より、変化が大きいため予測が困難であるといえます。戦いにおける手順は、想定条件として、「大石や要石に関係する石が、取られてはいけない」という絶対条件を満たしながら、手順が進行しているのですが、「石が取れる手数は、逃げる手数より多く必要」であるために、もし相手がミスをした場合には、「相手の石を取る手」が最善手となり、ミスしなければ「互いに取られない手」が最善手となり、戦いにおける最善手順は、相手の逃げる動作に対応した手順となるのです。

6 中央での厚み(天元)よって、中盤以降の優位な戦いが可能になる。

厚みの働きは「ポン抜き30目」といわれるほど、天元付近つまり中央の厚みは、辺や隅に比べてはるかに効果的になります。その理由は、中央の戦いが辺や隅の戦いより複雑であり、また中央での戦いの結果が、辺や隅へのヨセに対して大きく影響することがその理由となっています。

7 中央は絡み攻めが生じやすいため、絡み攻めにならないよう用心する。

   中央の戦いは、四隅での戦いの関連性が高く、2つの戦いの同時並行で進行し。その生きが、はっきり確定していない場合に、「絡み攻めの狙い」の対象になります。絡み攻めになるとその対応は、一気に難しくなり、大石が取られるなどが原因で負けるという結果になります。

D よせでの先手後手を意識する。(終盤)

よせの段階になると、一手の価値の大きさが地の大きさと比例関係になります。つまり一手5目や3目というようにその大きさが確定した状態になっています。このため、その計算方法を知るだけで、よせの棋力は一気に上がることになります。

8 先手よせ、後手よせを意識し、先手よせを優先する。

よせの状態では、先手よせの形と後手ヨセの状態が混在しています。打つ場合は両先手ヨセ、片方先手ヨセなど先手であると判断した場所から打ちます。

9 後手よせでは、最も大きい手を見つける。

先手ヨセがなくなると、すべて後手よせになっています。後手よせでは、正確にその一手の大きさを計算する方法が確立しています。この方法を理解し、後手ヨセの大きさを間違わないように打つことが重要になります。