強くなるための「対局意識」(3)

第3回目 目標と「天元の戦い」

A)上達の扉

その1 大きな目標と野望

「少年よ大志を抱け」という有名な言葉があります。人生において、大きな夢や目標は、大変重要であることは間違いありません。夢や目標は生きがいとなり、その人の人格形成において大きな影響を与えます。子供に「大きくなったら何になる」「僕はパイロット」「僕は先生」「私はお医者さん」これらの希望は必ずしも実現しない場合がありますが、最近ではオリンピック選手になるといって、15歳で実現する子供まで現れているのは、新時代に生きる若者にとっても喜ばしいことに思います。

その2 囲碁の戦略、戦術、そして構想

囲碁には、戦略や戦術また構想という言葉があります。この中で、構想には、戦略や戦術に比べ、多少学問的な雰囲気があります。駅前の開発構想、顧客獲得の戦略、構想という言葉には、法則としての自然で基本的な考え方があり、戦略や戦術には、その時代、その場面にあった方法というものを感じさせます。

市長「山田君の考えは、どうだい」、山田「ぼくの考えは、自由で闊達な市民生活を重視した駅前広場にしたいので、ここに出会いと憩いの空間を作りたいと思います」市長「山本君の意見は、どうかな」、山本「私は、集客戦略として催しの広場の設計がいいと思います」

その3 対局意識にもある構想と戦略

囲碁における構想とは、普遍的な法則に基づく大きな目標や方向性であるといえます。それは、どのような対局においても全員が求めているものであるのですが、実戦の結果は、その場面から生まれる戦略、戦術によってまるで違う形にみえるかもしれません。

B)意識の窓

その4 大公のまね碁

囲碁には、大公のまね碁という逸話があります。これは、秀吉が編み出したといわれる戦術ですが、本当に秀吉が考えたのかは、疑問が残ります。秀吉は名人に向かって「先番で、コミがあればお前に負けはしない」と豪語し天元に第一手目を着手し、それ以降をすべて名人の打った手を真似たのです。本当に秀吉が勝ったどうかはわかりませんが、この考え方は、囲碁の特性を言い当てています。それは、本当の天王山の戦いは、隅や辺ではなく天元にある。天元の戦いを制した方が、勝つゲームであるということです。

その5 天元の戦いを意識する。

天元に、大きな勢力の砦ができると、形勢が有利になることは、碁が強くなると経験する法則といえます。格言として「ポン抜き30目」がありますが、序盤における天元のポン抜きは、それ以上の効果があると思われています。ただし、この効果の大きさは、攻める力と比例しているため、初級や中級の段階では、なかなかその効果を体感できないのは残念なことです。

「え、ここをポン抜きさせるの」「1目なんて小さいから大丈夫」なんて言葉もひょっとして、アマの対局では、普通のことかもしれません。

強くなればなるほど、天元の戦いを意識するようになり、中央の戦いに強くなることが、本当に強くなったと実感する上達サインなのです。