強くなるための「対局意識」(2)

第2回目 格言と「攻める意識」

A)上達の扉

その1 格言が生まれる。

多くの格言は、当然ながら生まれた原因や理由があります。「左右同型中央に手あり」は、「着手が交互に打たれること」や「碁盤が正方形である」ことらが原因として考えられます。これらの理由の多くは、囲碁の基本ルールから生まれています。人生においてのアドバイスも「お金を大切にしなさい」「友人を大切にしなさい」などの言葉は、大人として生きていく経験によって生まれていますが、「生きるのにお金は必要である」「生きるのには友人が必要である」というように、その必要性から格言は生まれています。「死んで花実が咲くものか」「この世は、生きてなんぼの世界」という言葉からわかるように、人生においてはよりよく生きるということが、その中心テーマになっています。

その2 対局の心構えの目的

対局の心構えでは、「勝つことよりも、失敗から上達する」という意識が重要であるとえます。上達する過程おいては、失敗はつきものです。しかし失敗すると人は落胆し、生きていく気力を失います。囲碁でも負ける失敗は、大変つらいことであり、経験したくはありません。誰しも、勝ちながら強くなりたいと願います。しかし残念ながら、初級や入門の人たちは、負けることの方が多く、負けることが勉強といえるほどです。生徒「先生石取られて、負けちゃった」先生「そうか、取られて負けたのか」「どの石が取られたの」「この石が取られた」「そうか、この手がちょっと無理だったね、こちらに打っていれば取られなかったのにね」このような助言があれば、失敗してもやる気は残るものです。このように、負けた原因がはっきりすることで、次の希望に変わる可能性さえ生まれます。失敗を恐れず、失敗を有意義な経験に変える「対局の心構え」が必要なのです。それは、失敗しても心が挫折しない、心のセフティネットであり、失敗から学べる魔法の言葉といえるからです。

その3 攻めながら守る。

勝負には、多くの場合「攻撃は最大の防御なり」という哲理があり、囲碁においても、「攻めながら守る」という効率法則があります。「守ってから攻める」意識は、消極的であり、いい結果がなかなか生まれません。囲碁では、空間の広い新天地に相手より先行して打つと有利となることが多く、攻める手の背中側は新天地となる空間があるのです。逆に守る手は、発展性の少ない手、新天地のない手になるのです。この攻めるという意識は、投資をする考え方に似ています。新たな事業にお金を投資することは、未来の可能性を重視した考え方になります。囲碁での投資のチャンスは、手順が進行するほど少なくなるため、いつも投資チャンスがあれば、それを優先させる意識が重要になります。

その4 攻める手は危険な手

攻める手は、守る手より危険な手である。これは「ハイリスク、ハイリターン」という一般法則にも従っています。つまり成功すればより多くの利益が得られますが、失敗すると大きな損失になります。このため、失敗しない工夫が必要になります。さらに、失敗しないための検証が必要となり、このための読みの力が自然と身につくことになります。「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」失敗しない工夫は、「攻めながら守る」という意識によって、養われる成長することになるのです。