囲碁理論の概要(碁の方程式 基本概念)
ここでは、囲碁理論での「着手効率」「形勢判断」「勝敗確定」の3つに関する理論と囲碁上達の関連を研究します。
- 第1章 囲碁理論の基礎知識
- 第2章 棋力差と効率差の原因 8/28
- 第3章 戦いの必然性 9/2
- 第4章 ゲームとして着手効率 9/8
- 第5章 対局意識の重要性 9/29
第1章 囲碁理論の基礎知識
1 空間への認識(空点)
「未確定」 「勢力」 「確定」 「ダメ場」
地とは、対局開始時点では、すべて未確定な属性であった空間(空点)が、ゲームの確定性(特性)によって確定地に変化したものである。
2 領域への認識
空間が、ある特性によって集まったものが領域である。確定地になるには、その中間過程において、勢力地となる。確定地は、相手にとっては、死の確定領域であり、この領域の確定によって、石の活きが確定する。
(1)死活領域の認識…死の領域と生きるために必要な領域の認識
盤上にある石は、空間属性の変化と同時的に「未確定な空間」「勢力地」「確定した空間」と変化します。ただし、この変化には、最低限の死活領域が必要であるため、この制約された死活領域を前提に、戦いが展開されています。
(2)争点の認識 …未来におこる最終決戦(天王山の戦い)の予測
終局になると、盤上の領域はすべて確定した領域になります。領域は、活きていない領域同士の接合以外は容認されないため、活きが確定していない領域の石が接する場合は、必ず戦いが生まれ、どちらかの領域が消滅することになります。
(3)確定へのプロセス…
確定する方向とは、石が盤上に存在できる方向であるため、石が強くなる方向を意味しています。石が取られなくなると、その周囲に確定地が生まれることになります。
3 着手効率と基本価値
A)着手効率とは、
着手効率とは、盤上の空間で、自分の確定地が生まれる割合が多くなること確定事象をいいます。この効率は、最初の構想段階において、すでに、効率差が生まれています。また戦うかかどうかの判断選択、つまり戦略や戦術において効率が生まれます。さらに戦いの結果生まれた先手の権利によって、また、弱い石との関連によって効率差が生まれています。
◆ 基本価値
基本価値とは、着手効率を生み出す3つの基本的な価値をいいます。
- 可能性の減少…一手で地が囲える大きさ(絶えず減少しゼロになる)
- 危険性の増減…一手で石が取られる大きさ(振幅してゼロになる)
- 確定性の増大……構想の選択枝の減少(振幅してゼロになる)
◆ 確定性とは
確定性とは、盤上の領域がすべて未確定から3つの確定領域「活きの領域」「死の領域」「だめの領域」となる確定領域へと変化する事象をいい、確定性の増加は、「可能性の減少」と「危険性の減少」によって生まれています。
活きの領域とは、盤上に活きた石が置かれた領域をいいます。
死の領域とは、盤上に石が置けない領域をいいます。
◆ 着手効率と読みの力の本質
囲碁の着手効率は、構想の自由な選択によって生まれています。つまり、構想の選択、戦略の選択によって「可能性」と「危険性」がその状況によって変化し、確定性は石の連結を強くし、その影響によって地の確定率が高まり、死の領域が増減します。このことから、究極の読みの力とは、構想の選択能力であるといえます。
◆ 形勢差と終局までの手数
「形勢差」および「終局までの手数」は確定性と関係があります。形勢差は、「死の確定領域(確定地)」と「取られた石数(死石数)の合計差になります。終局までの手数は、「活き確定領域」の広さと、(死石数)の合計になります。死石とは、盤上から取り揚げられた石のことをいいます。
4 形勢差の原因
形勢差は、着手の効率差であることから、この効率差の原因を追求し、効率差を高める練習や知識習得が棋力アップのための学習であるといえます。
◆ 形勢差が生まれる原因
形勢差の生まれる原因は、100%悪手が打たれたことで生まれるため、どのような手が悪手になるか、悪手をどのように評価すればいいのか、また悪手にはどのような種類があるのかを検証する必要があります。
◆ 悪手一手だけでは、形勢差は生まれない。
形勢差は悪手一手だけですぐに生まれるのではなく、一連の戦いが完結することでやっと生まれます。つまり、打たれた悪手一手だけでなく、結論に至るまでの10数手を、咎め続けることが必要なのです
◆ その手が悪手であることを、知らないから悪手を打つ。
悪手が打たれるのは、その手が悪手であることを知らない場合のみ打たれるのであり、もしあらかじめ、悪手であることを知っていれば、打たれることはありません。つまり、悪手が発生するのは、悪手であることを知らないことが第一原因になります。また、悪手をすべて知っている人はほとんどいないため(いるとしたら碁の神様だけで)、ほとんどの手には、悪手の要素が含まれていることになります。
◆ 悪手の判定(2つの条件)
悪手の評価には、2つの条件が満たされる必要があります。第一は、異なった2つの戦いの結果の比較をします。Aの結果よりBの結果がよければ、Aの選択は間違いであることになります。第二は、その戦いの結果が、部分的に完了し、「勝負として他の戦いに影響していない」こと。この2つが絶対条件になります。
◆ 実戦は未来の関連評価の方か多い
実戦では、第一の条件より、第二の「他の戦いに影響していない」という条件を満たすことが、かなり難しい条件になります。着手評価には、「味が悪い」「捨石にする」「攻め取りにさせる」「締め付ける」などの評価があり、かなり限定された特殊な戦い以外では、関連した評価が存在し、部分的に完結した戦いにはならないからです。
◆ 明らかに悪手であると断定できる場合
プロや高段者は、どのような場合に悪手であると評価しているのかといえば、
- 四隅や終盤での戦いにおいて、他に影響がなくあきらかに1目損な手
- 先手で利かせられる手であったのに、打たなかった場合
- 先手ヨセで打てるところを、不注意で相手から上手く逆ヨセの手を打たれた場合。
- 手入れが不要であったのに、必要になった場合。
- 手入れが必要なのに、その手が省略可能になった。
- 次の狙いが、なくなった場合。
- 次の狙いが、新たに生まれた場合。
このようなミスや悪手は、対局者が注意してさえいれば、そのミスを防げるものなので
防げるミスなのに防げなかった手を、悪手と呼んでいます。
◆ 意識できない悪手(ミス)
防げれる明らかなミスの悪手より、多くの悪手は、構想での選択ミスによって生まれています。この構想ミスは、上級者からの指導や指摘がないと気付けないものばかりといえます。その理由は、ミスが単独ではなく周囲の状況による複合原因で生まれ、その変化も多いためです。不思議なのは、その変化が多くても、対応ミスによって悪手が良手になることはあっても、悪手への対応がただしければ、悪手は良手にならないのが、碁の特性といえます。問題なのは、悪手に見える手でも、最後まで読みきらないと、いい手であった判断できないい手も数多く存在しています。
◆ はめ手に見られる悪手の例
「はめ手」という手は本来存在せず、相手が正しく対応すれば、はめ手で騙そうとした方
が悪くなります。しかし、ここでもはめ手は、部分的で確定した場合の評価であるため、
実戦の対局では、はめ手がいい手になることもあります。このように「悪手の評価は限定されたものだけであり、多くの場合は不可能である。」といえるほど、その評価を正しく行うことは困難です。
◆ 人間は構想ミスを、完全にゼロ化することは
人間は、悪手の根本原因である構想ミスを、完全にゼロにすることはできません。であるなら、人間は一体、このもっとも根本的原因である構想ミスをその実戦から学びつつ、その意味と経験を他に伝えていけるか、これが、未知なる未来の問題をいかに解決すべきかを示唆する「重要なアプローチ方法」の解明になります。