囲碁理論の概要(碁の方程式 基本概念)
第3章 戦いの必然性
戦略や戦術として、具体的な戦い方の本は、数多くあります。それらの多くは、部分的な戦いのテクニックや考え方の記載はあるのですが、戦いの必然性、戦いの特性について書かれたものではありません。
どうして戦いが生まれ、戦いは必然となるのか、そして戦いの結果、形勢差が生まれるのかであるが、その形勢差とは、どのようなメカニズムで生まれるのか。これが、ここでの研究テーマになります。
◆ 3種類の戦いの目的
戦いには3つの戦いがあります。それは
序盤での | @ 形勢が有利になるための戦い |
中盤以降の | A 形勢逆転のための戦い |
B 勝ちきるための戦い |
になります。
◆ 形勢判断の違い
戦いの進行形態によって、形勢判断も微妙に異なります。
序盤での形勢判断では、厚みが中心であり、地合いが副次的になりますが、
終盤になるほどこれが逆転し、地合い中心となり、厚みが副次的になります。
◆ 戦いの効率
戦いの効率に関する基本法則には
- 戦いでミスをすると、形勢差が生まれる。
- 相手の悪手を咎めることで、利益が得られる。
- 形勢が不利であれば、勝負手を打つ必要がある。
- 取られた石であっても、戦うことでその被害を最小限にすることができる。
- 戦うことで、石が強くなり、次の戦略がたてやすくなる。
などがあります。
◆ 戦いが生まれる基本原理
戦いの発生法則は、
- 互いに形勢が有利であると思っている場合には、戦いは生まれない。
- どちらかが不利であると思った時に戦いが生まれる。
これが基本になります。つまり有利である、不利であると思うことから、戦いが生まれています。
◆ 勝ちきれるかの戦い
形勢が有利なると、戦いの必要性はなくなるのですが、形勢が有利であると思っていても、有利である方から戦いが仕掛けられることがあります。それは たとえ有利になっても、
- 勝ちきれるも不安がある。
- まだまだ、新たな戦いによって生まれるミスの危険がある。
このような場合には、安全確実な勝利を得ようとして、戦いが生まれるのです。この結果「打ちすぎや着手ミスによって、逆転劇が生じることになります。つまり、将来の不安つまり勝ちきれるかの不安によって「勝ちきるための戦い」が生まれることになります。
◆ 布石とコミのルール
コミのハンディは、黒に戦いを仕掛けさせる(強要する)ルールといえます。
囲碁は、黒番が白番より有利であるため、コミとして6目半のハンディがあります。このハンディが設けられた意味は、「戦いも地合いも有利である黒に、地の囲い合いでは不利とすることで、白へ戦いを仕掛けさせ、構想の選択権の活用で、地の囲い合いで有利な状況を作ることができる」これが、ゲームとして戦いが生まれる最大原因であり、囲碁の本質的なゲーム性になっています。
つまり、黒は有利な戦いになる工夫を、白はそれを阻止し反発することで、有利に立つゲームになっています。
◆ 戦いは、ゲーム必須条件
ゲームとして捉えた場合、戦いから生まれる効率は、ゲームとしての必須条件になります。囲碁における互先の戦いでは、6目半のコミがありますが、コミがない場合、勝敗に大きく影響する「@全局的な戦いの効率」「A地合いの生成効率」の両方とも、黒が有利になります。
このことから、黒番への制約条件として、「全局的な戦いは有利であるが、地合い形勢は不利である」というハンディを作ることで、序盤における黒番構想を制限したのです。
このように、黒番が、最初の戦いを仕掛ける義務を背負ったことから、序盤での構想研究がより重視される時代になったのです。
◆ 黒の構想制限がゲームとして有効な理由
黒番での構想制限がゲームとして有効な理由としては、囲碁における「戦いとミスの特性」にあって
- 戦いの法則1 戦いは、石数の少ない早い段階で仕掛ける方が、有利になる。
- ミスの法則2 着手ミスの修正は、石数の少ない段階の方が容易で、被害が小さい。
ためです。