囲碁理論の概要(碁の方程式 基本概念)
第5章 対局意識の重要性
対局意識とは、対局する際にどのような考え方で対局すべきかという意識のことです。
対局における構想や着手選択では、対局意識による価値感から無意識に大きな影響を受けています。対局する場合には、この対局意識をいつも意識することで、上達スピードが大きく変化し、囲碁理論とは何か、囲碁とはどのようなゲームであるのかが、自分で自然と気付くことができるようになります。
◆ 知識と意識の違い
知識と意識は、どちらも上達にとって、重要な学習事項です。対局意識は、未来を生み出す意識、構想力が高める意識といえます。それに反して、手筋などの知識や練習問題は、過去の失敗と経験が集大成されたものであり、対局での着手ミスが少なくなる効果がありますが、構想力を高めるという効果は期待できません。
◆ 対局意識と確定意識
対局意識が重要であると思うと、失敗が増えることになり、一次的に勝つことが困難になる場合があります。これは、着手として、もっとも効率のいい手、今より厳しい手を自然に選択し、優先することから起っています。このため、勝率を上げるには、勝ちきるための「確定意識」の知識が必要になります。対局意識の目的が、可能性の増大を目指しているのとは対称的に、確定意識の目的は、勝負での危険性の減少つまり着手ミスを低減させることを目指しています。
◆ 格言と対局意識の違い
格言と対局意識の違いは、格言が部分的な戦術であり、場面における適正な対応であり、その価値を選択するに意味があるのに対し、対局意識は、すべての着手選択に必要であり、内在した基本となる価値感であるといえます。つまり、全ての場面において、その価値感は通用し、活用できるといえるのです。
◆ 対局意識の発見と役割り
ここでの対局意識は、囲碁における数百もの法則から発見されたものであり、それらの法則を分類整理する「着手効率への研究」から見つかったものなのです。このため、対局意識を実戦で活用する効果には、プラス効果として、対局を通じてで囲碁理論そのものがより深くわかるようになるです。
◆ 対局意識が気付けなかった理由(気づける失敗と気づけない失敗)
対局意識の重要性が、今まであまり意識されなかった理由に、失敗についての特性があります。失敗には、「誰でも簡単に気付ける失敗」と「囲碁理論を知らないと、気付けない失敗」があります。石が取られる失敗は、誰でもその原因を研究することができます。なぜならその失敗が、本来起きないことによる失敗であるためです。しかし「絡み攻めの危険がある」「打ち過ぎになる」など、将来の危険性を示唆する失敗は、発生時期と発現時期がおおきく遅れるため、理論としてその発生理由を知らない、一体何が失敗原因であるかを考えるこさえできないことになります。
◆ 対局意識にどのようなものがあるのか
具体的な対局意識としてどのような、言葉が必要であるかについて述べたいと思います。
ここでは、着手効率差の発生は
- 守ってから攻めるのではなく、「攻めながら守る」工夫から生まれる。
- 後手の争いでなく、先手の争いから生まれている。
- 「相手を制約する」、「相手から制限されない」制約条件から生まれている。
- 石が取られる危険性への損失回避から生まれている。
- 相手を動かす必然度の大きさ(受けさせる、反発させる、逃げさせる等)によって、生まれている。
また争点としては
- 序盤では、「隠れた天元の戦い」を中盤では、「絡み攻め」である。
- 序盤での「地の可能性」の大きさ、中盤以降の「地の確定率」の大きさである。
となり、その現象理由として
- 弱い石同士の境界線上の領域が、急場となり、弱い石と強い石の境界では、強い石側の確定地となる。
- @石を捨てる、A地を囲わせる B石を取る C自分の地にする という順序で、その達成目的度に差が生まれている。
- 戦いによって、両者とも石は強くなり、生まれた新らたな厚みによって次の戦いが連続している。
などがあります。