呉子
見 を以 って隠 を占 い、往 をもって来 を察 す。
表に現れた現象をもって裏に隠れた真実を推察し、過去の事実によって、将来の出来事を洞察する。
戦 いて勝 つは易 く、勝 つことを守 るは難 し。
戦って勝つことは容易であるが、その優勢な状態を守る維持することは難しい。
数 勝 ちて天下 を得 る者 は稀 に、以 って亡 ぶ者 は衆 し。
戦が得意からだといって連戦連勝を重ねる者は稀であって、いずれは敗北して身を滅ぼすものである。
兵戦 の場 は立屍 の地 なり。
死 を必 すれば則 ち生 き、生 を幸 すれば則 ち死 す。
戦場とは、屍をさらすところである。
死を覚悟して戦えば生き残り、生き残りたいと願えば死を避けられない。
兵 を用 うるの害 は猶予最大 なり。三軍 の災 いは、狐疑 より生 ず。
軍を統率するにあたっては、優柔不断がもっともよくない。
大将が、自分の決断を戸惑いると、その影響は全軍におよぶ。
近 を以 って遠 を待 ち、佚 を以 って労 を待 ち、飽 き以 って飢 を待 つ。
遠征を避けて、遠来の敵を迎えう撃ち、充実した戦力で疲労した敵にあたり、
十分に腹ごしらえして、敵の飢えるのを待つ。
戦 いの要 は、必 ずその将 を占 いてその才 を察 す。
作戦の秘訣は、まず敵将の器量や才能をよく調査し、相手に応じた作戦をたてることである。
貪 りて名 を忽 にするは、貨 もて賄 うべし。
敵将が貧欲で名誉を重んじない人間であれば、財貨で買収せい。