墨子
安居 なきに非 ざるなり、我 に安心 なきなり。
足財 なきに非 ざるなり、我 に足心 なきなり。
安心して住める家がないわけではない。安んじる心がないのである。
十分な財産がないわけではない。満足する心がないのである。
人 はその長 ずる所 に死 せざるは寡 なし。
人は、自分の長所によって身を滅ぼすことが多い。
古 の善 きものは則 ちこれを述 べ、今 の善 きものは則 ちこれを作 るべし、善 の益 多 からんことを欲 すればなり。
古人の立派な教えは伝えなければならないが、新しい工夫もまた生みだしていかなければならない。善い事は、いくらあっても多すぎることはないからである。
為 る所 人 に功利 あれば、これを巧 と謂 い、人 に利 あらざれば、これを拙 という。
物を作って、人間に役立てばすばらしい技術と呼ばれるが、役立たなければダメな技術と呼ばれてしまう。
百門 ありて一門 を閉 ざすも、則 ち盗 何 ぞ、遽 に従 りて入 るなからんや。
百も門があるのに、一つだけ閉めたところで、これで泥棒に入られなくて安心だというわけにはいかない。