囲碁理論入門
第1章 着手価値について
着手価値には、直接的価値と間接的価値の2つがあり、
その内容としては、「地の増減」と「石の損得」の2つがあります。
1 直接的価値と間接的価値
直接的価値とは、地の大きさに直結する確定性に関する価値であり、
間接的価値とは、石の死活に関係し、厚みの評価などの可能性に関する価値
であるといえます。簡単にまめると、
- 直接的価値=確定性に関する価値
地を減らす… 消す、打ち込む、石を取る。
地を増やす…. 地を囲う、地を守る - 間接的価値=可能性に関する価値
弱い石を補強補強する。
弱い石を攻撃する。
大場に打つ手。攻めを狙う。戦いに関する手
2 地の増減
地に関する手には、自分の地を確保する手と相手の制限するす手があります。
◆ 地を囲う(確保する)
一手で囲える確定地の大きさは、
四隅では7目、辺なら6〜5目になります。6目以上あれば合格です。
7目より大きな地は、通常は2手以上必要になります。
4目以下なら、戦いが優先されます。
◆ 地を減らす(制限する)
相手の地を減らすことは有効な手段です。その手段には、「消し」と「打ち込み」があります。どちらの場合も打った石が取られてはダメです。
消しは、生きている石に繋がるよう逃げて打ちます。
打ち込みは、相手の地模様の中で生きるように打ちます。
3 取る、捨てる。
◆ 取る(逃げる)
相手の石を囲って取るには2つの方法があります。効率からいえば、死活で殺す方が得です。
- 攻め合い………相手の周りを全て囲って取る方法
- 死活(殺す)…相手の目を奪って、生きられない状態にする。
◆ 捨てる(捨石)
2子以下の石を、自分の石を相手に取らせて得をする方法を捨石といいます。囲碁では一手の最大価値が6目の確定地を基準とするため、3子以上の石が取られると6目の地を与えるため、捨石になることは難しくなります。
4 戦いの原理(危険性の価値)
戦いとは、互いに生き難い状態になることをいいます。例えば、相手が「消し」の手を打ってきた時、その石を他の石と繋がらないように攻める動作になります。攻めるという動作は、その石を取る可能性が生まれますが、自分の石も取られる危険が生まれています。
◆ 戦いになる場所の想定
戦いに勝つには、戦いへの準備が必要です。布石や定石は、戦いの準備動作といえます。戦いは、相手と自分の勢力地の境界でよく起ります。境界には2つのパターンがあります。
境界 | 自分 | 相手 |
A | 地を囲う | 地を囲わせない |
B | 地を囲う | 地を囲う |
◆ 有利に戦う方法
有利な戦いをするためには、「3対2」「4対4」といったように、自分の方が、相手より石数が多い状態を作ることが必要になります。またこの有利かの判断は、石数だけでなく
- 生きるための生き易さ
- 囲まれるまでの手数さ
からも判断されます。
5 構想の評価(自由性)
囲碁は、
- どこにでも打てるという着手の自由性
- どのようにでも考えられるという構想の自由性
2つの自由性があります。この自由性の大きさも形勢判断の重要指標になります。
構想の自由性は、一手の価値として評価しにくいため、勝敗結果への影響は小さいと思われがちですが、高段者における棋力差は、この構想の自由性(構想力)の差であると断言できるほど重要になります。なぜなら、強くなればなるほど、「石が、取られる」などの単純な失敗は、ほとんどなくなるためで、ミスの多くは構想ミスとして評価されるようになります。