本因坊戦 第4局についての感想

この対局について

この第4局は、序盤での白の22手目の問題手(切り)から、高尾挑戦者が優勢に立ち、絶えずリードした、流れになりました。77手目までは、黒からの問題手はほとんどなく、白には、2箇所の問題点を感じています。

78手以降97手目までの右上辺での戦いは、棋士によって意見が分かれるかもしれませんが、勝敗に大きく影響したとは思えません。つまり検討すれば、もっとよい手があるのかもしれませんが、私には全くわかりません。

97手目で、一旦「黒の勝負あり」の状態に見受けられましたが、白の98手目の土俵ぎわとも思える「妙手としての勝負手」によって白が1回目の危機の脱出に成功しました。そのあと、黒の頑張りと、先手を重視した妥協によって、右上辺の部分ではかえって白が得をした結果になりました。

先手をとった左辺への黒の、115手目の大場の手がやや問題手で、白から反撃を与える隙が生まれました。しかし、白も利かしで打ったつもりの左辺での戦いで、かえって石が重くなり、黒123の絶妙の切りの「妙手」によって、またも2回目の大ピンチを招いています。

その後147手まで、黒は必勝パターンに乗ったかのように優勢に手順を進行させたのですが、白148の「かけ」手に対する反発の切りで、一気に勝負を決めようと出切った手が問題でした。この黒の149手と白の22手とは、同じ特性があるように思われます。つまり手拍子であり、いわゆる、「気合」とよばれる一手です。

この局面では、もう一度構想のチェックと読み切りが必要でした。ただ対局者の疲労がピークでの緊張状態から開放された「一瞬の心の隙」特に直感的に勝ちが見えたこの一瞬は、誰にもコントロールができないのかもしれません。

この出切りによって、白に最後のチャンスが生まれました。その後は実戦の進行となって、白がこの乱戦を制したのですが、この一勝は、偶然の神様が張本因坊に微笑んだ結果であったかもしれません。これをチャンスに最終戦での決着に向けて、張本因坊の奮起を期待したいと思います。