日本囲碁ソフト

本因坊秀哉

語録

ほうらずしては、地理ちりらずしてみちくがごとく、 たるにいて、いささ価値かちきものとす。
囲碁の理論を知らないで打つ碁は、地理を知るないで道を進んで行くようなものである。それは、碁の本質を究めるということからみれば、全くの価値の無いものである。
沈着ちんちゃくにして遠慮えんりょあり、目的正大もくてきせいだいにて、すこしも奇勝きしょうせず、奇敗きはいまねかざる、これ正道せいどうとす。
碁を打つときは、心が冷静であり控えめで相手を尊敬する気持ちが大切であり、目的は正当性があり、少しも偶然の勝ちを期待せず、またミスを招かない。これが碁の正道である。
損得そんとくはまずは互角ごかくをよしとせよ。そんだにせずばくることなし。
損得の考え方においては、相場、つまり白黒の相互利益が互角であるいうことが基本となる。自分だけの損をしなければ、負けることはない。
まこと変化へんかきわまりし、到底とうていかたちりておくつくきにあらず。かならずやって悟入ごにゅうし、臨機応変りんきおうへん工夫くふうあるをようす。
碁では、その変化に限りというものがない。定石がこうだからといった形に制約されるのではない。その局面での最善の目的に対して、臨機応変に工夫することが大切である。
学習がくしゅうする所無ところなく、たん天禀てんりん技能ぎのうってものは、局部きょくぶしょうせいするにたくみなるも、大勢たいせいいてけとなることおおし。
人の打った碁を研究せず、単に自分の感性や今までの知識で碁を打つものは、部分的な優勢を得ても、全局的に後れをとって負けることが多い。
囲碁いごみち全然ぜんぜんてきをしてところからしめ、またてき殱滅せんめつしてって、我獨自一已われひとりみずからいちい天下てんかすをするにあらず。
囲碁の道では、全く敵には利益をえないようにし、または敵を徹底的に壊滅しよいとして、自分一人の天下を得ようとしてはいけない。
てきわれき、てきわれるのかんありてれ唯我ただわれ一著いちちょさきり、って優者ゆうしゃたらんことをするにあり。
敵も活き、自分も活き、敵も自分も利益を得るのであるが、自分の方がほんの少しだけ先に得をするというのが、優れた打ち手の目標とするところである。
平和へいわあらそいなるは、数子すうし勝敗しょうはいとなり、戦闘せんとうあらそいなるは中押なかおし勝敗しょうはいとなるをつねとす、しかれども戦闘せんとうかん平和へいわそんし、平和へいわなか戦闘せんとうこころふくむもまたつねなり。
静かな戦いの碁は、僅かな差の勝敗となり、激しい戦いの碁は、大きな差の勝敗となるのが普通であるが、しかし、激しい戦闘においても平和の心が基本であり、平和な戦においても戦闘的な気合いが必要である。
奇正離合きせいりごうつねありてしこうしてつねなく、へんありてしこうしてへんなき、これみょうとす。
俗手と本手の組み合わで、絶えず変化が生まれ、相手がその変化を避けようとさらに変化しても避けることできない。これが妙手である。

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