第2章 手順と確定性

3 手順進行と価値変化

  1. 変化していく価値
  2. 確定いていく価値
  3. 可能性、危険性、確定性
  4. 一手の効率への影響
  5. 囲える地の大きさ最大基準
  6. 勝敗が確定する

【1】変化していく価値

手順の進行によって変化していく価値を考えてみることにします。盤上の変化は、石数が増えまた打てる空間が狭くなることで、「可能性」「危険性」「確定性」という3つの価値が変化していきます。この価値変化から、新たな価値として、「制約条件」「必然手」、「先手」などの価値が生まれることになりますが、特殊な場面では「手止まり」「見合い」「勝負手」といった価値の手も生まれてきます。

◆ 2つの絶対条件

このように価値変化によって、いろいろな働きのある手になるには、かならず満たされなければならない2つの絶対条件があります。それは

  1. 地を囲うには、
    複数の関連した石の働きと協力が必要である。
  2. 地になるには、
    関連した石は、すべて生きれなければならない。

という条件です。つまりこの条件とは、一手の価値としてその役割が達成するには、複数の石が一つの関連した働きとして作用し、「生きることが可能である石」になる必要があるのです。

【2】確定していく価値

 「手順進行」と「価値変化」の関係では、空間の減少が大きく影響しています。それは空間が狭くなるにつれ、地として囲える「可能性」の価値が小さくなり、その反対に石数が増えることで、石が取られる「危険性」が増えることをいいます。その結果、完全に生きた状態としての価値、つまり絶対に石が取れない安全性として「確定価値」が高くなっていきます。

◆ 正比例な関係と反比例な関係

この「可能性」「危険性」「確定性」の3つの変化状況を手順進行によって比較すると、可能性の価値は終局まで一定に減少することにあり、確定性は逆に上昇する関係にあります。危険性は、寄せの直前に全ての石が活きた状態になることで、急降下してゼロの状態になります。勿論寄せになっても生きていない石がある場合もあり、その場合の危険性は上昇し続けます。

◆ 勝敗の確定状態が生まれる

すべての石が生きた状態になると、まだ打てる場所があるのに、逆転できない状態が生まれることがあります。このことを「勝敗の確定」状態と呼ぶことにします。このような勝敗の確定が生まれる理由には、地として囲える可能性の減少が大きく影響をしています。

【3】可能性、危険性、確定性

手順進行で変化する三つの価値について、まとめてみます。

◆ 「可能性」の減少

打てる空間が狭くなると、もっとも大きく影響するのがこの地として囲える地の空間の減少です。囲える空間が狭くなると、それにつれて一手の最大値価も小さくなり、地を増やす手より、石が取られないよう「守る手」の価値が相対的に大きくなります。

◆ 「危険性」の増加

生きなければならない石数が増えると、取られた場合の損失も大きくなることから、「危険性」が増大します。また空間が狭くなることから、生きることがより困難になり、このことからも危険性は大きくなります。

◆ 「確定性」が高くなる

囲える空間が狭くなると、地の増加量が小さくなり、逆転の可能性も小さくなっていきます。また石を捨てることができなくなり、確定性が高くなっていきます。そのため、まだ石が打てる場所があるにもかかわらず、勝敗の確定が起こります。

【4】一手の効率への影響

一手の効率もまた、「確定性」「可能性」「危険性」の三つの影響を受けて進行していきます。対局スタート時では、盤上に石数が非常に少ないため、「場所」「形」などによる「地の大きさの効率」の影響を大きく受けますが、手順が進行すると、「地の大きさの効率」より「生きるための効率」という価値の方がより重要になってきます。

◆ 生きる効率が重要になる

空間がまだまだ広い序盤では、石が取られる危険性が少ないため、一手で囲える地の大きさそのものが重要になり、その結果、隅での場所的な効率が優先されることになります。
手順が進行するにつれ、活きる空間が狭くなること、活きるため可能性や変化できる選択肢も減るため、より生きにくい状況へと場面が進行していきます。つまり、生きなければならない条件が上昇することになり、広範囲な領域にまで「生きれる」条件の制約が広がることになります。これが「全局的な流れ」を生み出す原因になります。

【5】 囲える地の大きさが最大基準

手順の進行度合いによって、その場面での最大価値が変化変化していきますが、それらの原因は、空間の広さが関係しています。空間が狭くなると、地を囲う効率が悪くなり、生きるための条件が難しくなります。地を囲うことは、地の大きさだけでなく、生きるための眼の確保にも大きな影響を与えています。

◆ 地として囲える価値の変化

囲える地の空間が減少することで、一手の最大価値が限定されることになります。つまり地が囲える可能性の上限が決定されることによって、「石を取る価値」や「切断する価値」の大きさが評価されているのです。それらは、また先手の判断や最善手の判定基準になっています。また空間の広さは、生きるスピード差を生むことになるため、石の強弱の判断基準にもなっています。

【6】勝敗が確定する。

最大価値が減少することで、「勝敗の確定」という現象が生まれます。この現象は、最大価値の減少とともに「生きにくい状態」が生まれ、生きる価値と打てる可能性の減少によって起こってしまうのが、主な原因と考えられます。また、地を囲う石数が増えることから、地として確定性が高くなり、勢力地から確定地へと変化が同時に起こってきます。このような「確定状態の増加」によって、急激な地の増減が生まれなくなり、その結果逆転が起きなくなるのです。

◆ 先手との関係

この「勝敗の確定」と「先手」とは密接な関係にあり、先手は、「石が取られる危険性を守る」ことで打たれています。つまりもし取られると困るような危険な石がなければ、先手が生まれないということになります。このため、先手が生まれると「勝敗の確定性」が大きくなることになります。

◆ 「勝敗の確定」を高める戦略

形勢が大きく有利な場合には、取られる可能性をゼロにすることで、「石を取られないよう守る戦略」が、成立することになります。これも、最大価値の減少によって生まれる戦略といえます。