第1章 基本理論

囲碁のゲーム特性

  1. 着手の自由性とは
  2. 危険性の増大
  3. 着手のスピード性
  4. 邪魔する方がスピードが速い
  5. 邪魔する方が効率いい
  6. 連続性の効率
  7. 構想への影響

【1】着手の自由性

囲碁のゲームとしての最大の特徴は、どこにでも打てる「着手の自由性」にあります。囲碁は将棋を含めた他のゲームに比べてもっとも自由性が高く、また盤の広さも19路と格段に大きくなっています。そのため、この着手の自由性が、「構想の自由さ」を生みだし、相手の手を予想することや、相手の手に対する対策が難しいゲームになっています。

◆ 相手の自由性に制限をかけ、自分の自由性を高める。

地を囲う効率においても、構想の自由さとは正反対に、この着手の自由性が高いゆえに、地になる確定性を困難な状態にしています。つまり地を囲わせない邪魔する働きの方がより有利なゲーム特性になっています。このような理由から、相手の「邪魔する自由性」をいかにして制限をかけ、反対に自分の構想の自由性をいかにして高めるかを争そっているゲームともいえます。必然性がなければ、予想が困難になり地を囲う効率をあげることはできません。

◆ 着手の自由性が大きい

【2】「取られると危険性」が大きくなる

着手の自由性とは正反対に、一旦盤上に置かれた石は、将棋の駒のように動かすことはできません。つまり囲碁のルールには石を動かすことができない「移動禁止の制約」があります。このため、もし弱い石が攻められ、逃げなければならない状態になると、その石が完全に活きるか、または安全な状態になるまでの間、石数が増えていくことになります。

法則 石数が増えると、より危険性が生まれる

石数が増えると、より取られてはいけない危険な状態がうまれ、このような状態のことを「石が重くなっている」状態といいます。構想としての自由度を奪われ、相手の手に対して受けなればならない状態になります。戦いとしては不利な状態になってしまいます。生きていない石同士の戦いでは、両者に制約条件が生まれており、石数が一づつ交替で増えるごとにこの条件が交互に逆転するため、形勢互角の状態を保っています。

◆ 取られる危険性が大きい

【3】目的達成のスピードの違い

囲碁ゲームにおいて、石を取る方が逃げるより簡単であったら、盤上の石はすぐに取られてなくなってしまいます。また、相手の地を減らすこともできません。地を囲わせないように邪魔しようとしても、すぐ取られてしまいます。つまり、ゲームとしての成立には、石を取るゲームであるが、石はなかなか取れないゲームであることが必要なのです。

■ 格言の「取ろう取ろうは取られのもと」

格言に「取ろう取ろうは取られのもと」というのがあります。本来、取れない石を取ろうとするから、自分の切断点が多くなり、ダメも無理につめることになるので、反対に取られてしまうことをいっています。相手の石を取ろうすれば、囲う方が石数がたくさん必要なため、切断点が多くなるのです。
 

◆ ゲームの特性

【4】 邪魔する方がスピードが速い

法則5 石を取るより、逃げる方がスピードが速い

石を取るには、上下左右の全てを囲うことが必要なため、一つの石なら4つ、2つの石なら6つ必要となります。このため、囲う側の方が、数多くの石が必要です。

法則6 殺すより、活きる方が速い。

石を殺すには、その周囲をすべて囲うことが前提条件になります。そのため、囲われる側より、囲う側の方が多くの石が必要であり必ず活きる手が先になります。

法則7 地を囲うより、邪魔する方がスピードが速い

地を囲うためには、最低でも3つの以上の石数が必要ですが、地を囲わせないように邪魔するには、一つの石で済み、地を囲わせないスピードの方が速いことがわかります。また、石を取るより逃げるスピードの方がスピードが速いため、邪魔しにきた石を取ろうとしても、なかなか取れません。

◆ 達成スピードが違う

交互に打つので、単純な動作では石は絶対に、取られない、死なない、地は囲えない。

【5】相手の邪魔ができると、効率がいい。

自分が地を囲おうとすると、相手は地を囲わせないように打ってきます。相手の石を取ろうとすると、相手は逃げようとします。つまり「目的を達成する効率より、邪魔をする効率のスピードが速い」ため、自分の構想をスムーズに達成できるように工夫することふが重要になり、そのための戦略が、相手に自由に打たせない工夫となります。

◆ 「地を囲わせない」方が効率がよい

自分の地を囲うより、相手の地を囲わせないように打つ方が効率がよい理由は、

  1. 地を囲うには数手が必要であるが、地を減らすには一手で済む。
  2. 地を減らす手の方が、先手になるやすい。
  3. 地を減らす手から、また減らす次の狙いが生まれやすい。

などがあげられます。ただし、相手の邪魔をする行為にも効率としての短所があり、「石が取られる危険性が高い」「相手の石を強くする」「先手を与える」などの欠点があります。
 

◆ 邪魔する方が効率がよい手になる。

【6】着手の連続性があると、効率がいい。

囲碁の着手の目的は、勝つためには、どう打てば最も効率よく地を囲うことができるかに集約できます。そのため、着手の評価において最も重要なことは、自分が描いた構想通りに実現できるかどうかにかかっています。つまり理想の構図の実現性が問題になります。

◆ 一手で目的達成できない

構造の実現において重要なことは、「ローマは一日で成らず」といように「一手では構想は実現しない」といえます。つまり単純に地を囲うゲームであるにもかかわらず、複雑で難しいゲームになるという答えが、「地を囲う」「石を囲う」「取る」などのあらゆる目的達成において、「1手では目的が達成できない」ゲームになっているからです。つまり、数手の石の関連した石の配置が必要であり、この配置の関連性を高める手段として、「連続性」や「着手の必然性」が必要になることになります。この連続性した着手によって、切断などの危険性が回避でき、効率のよい大きな地を囲うことが可能になります。
 

◆ 連続した関連性によって

ローマは一日で成らずというように・・・

【7】構想への影響 (効率差)

構想の法則には、「地を囲う効率より、囲わせない効率がよい」という重要な法則があります。この法則が生まれる理由としては、「相手の地を減らす手は、自分の石も取られる危険が高い手であるが、石は簡単には取られない」という関係によって成立しています。ただし、効率が高い邪魔をする手を打つ代償として、「自分の石が取られてはいけない」という制約条件を、相手に与える不利な結果も同時に与えることになります。

◆ 一手の効率と制約条件のプラスとマイナス

相手の地を減らす手には、相手から得た多くの利益より以上の損失を、相手から取り戻される危険性があります。つまり、相手に自分が与えてしまった制約条件や先手によって、新たな「打ち込み」や「消し」「攻め」などの打つチャンスをの与えることになるのです。たたし、反対に相手が攻め過ぎたり、攻める方向を間違たりするとことで、相手の特権が自然消滅する場合もあり、これがゲームとして面白さ、難しさになっています。

◆ 全体のまとめ

4つの法則性

確定性の増加(+)…. 変化、選択できる可能性の減少。
  危険性の増加(+)…. 石が取られる価値の増大。
可能性の減少(-)…….地が囲える価値の減少
 構想の効率………….. 地を囲う効率より囲わせない

◆ 必然性への流れ

布石     序盤      中盤     終盤     寄せ    
場所効率 ⇒ 制約条件 ⇒ 必然の流れ ⇒ 必然手 ⇒ 先手

より必然性の高い手へと、順番に生まれ 変化していく