囲碁理論の入門講座

ゲームの特性

1 勝つための制約条件

囲碁ゲームの特徴を目的、権利、義務の視点からまとめると

  • 目的… 確定地を増やす。
  • 基本ルール1 権利… 生きる選択ができる「構想の自由」
  • 基本ルール2 効率… 地になる空間を囲って確保する。
  • 基本ルール3 確生… 完全に生きた石は、取られない。
  • 基本ルール4 危険… 終局までに生きなければならない。

になります。

勝つためには

  1. 大きな確定地を囲うことが必要になる。

そして、その手段として

  1. どこにでも打てる「着手の自由」
  2. 自分で自由に生きることができる「構想の自由」

という権利を活用し、より大きな勢力地を確保しようとします。
逆それを阻止する条件として、

  1. 生きた状態になると取られない。
  2. 終局までに生きた状態にならないと取られる。

2 可能性、危険性 確定性の3大基本価値

価値には、可能性、危険性 確定性の3つの基本価値があり、これが、自分への獲得(プラス)価値として

@ 可能性の確保 A 確定性の増大 B 危険性の減少

という獲得目標になります。これらの目標が生まれる理由は

  1. 可能性の法則…一手で、囲える地のおおきさは減少する。
  2. 危険性の法則…終局までに生きなければならない。
  3. 確定性の法則…未確定な領域が勢力地となり確定地になる。

の三大法則から生まれています。

3 勢力地の確保と相手への制限

勢力地を確保する利益は

  1. 地になる可能性は増大させる
  2. 石が取られる危険性を減少させる
  3. 確定地になる確定性を増大させる。

3つを同時に獲得できる働きがあり、対局開始時からの最大の獲得目標になっています。これが

地の大きさ = 勢力地 × 地の確定率

という式の重要性の理由にもなっています。

このため、対戦者は互いに相手の勢力地を制限しながら、自分の勢力地を確保しようとする戦いが展開されることになります。

4 中間状態での評価

着手効率の評価は、本来

公理 生きた、死んだ、確定地であるという確定状態でないと正しい評価はできない。

ことになります。ところが、実戦での評価は、中間状態での評価であり、状態が確定しない可能性の大きさで評価されています。

5 制約が優先される理由

相手の構想制約が優先されるのは

  1. 碁盤は、19路という制約された空間価値である。
  2. どこにでも自由に打てる価値がある。

ため、これらの価値を阻止することで、「生きる価値」と「確定する価値」を阻止できるからです。この阻止手段として、「死活」「攻めあい」の戦いや、「生なければならない」という制約ルールがあります。戦いが成功すると「生きる可能性」が大きくなり、構想の自由性が大きくなり、失敗すると着手の制限が大きくなります。

6 石の配置バランスと棋力の評価

石の配置バランスの評価は、互いに「地合いの大きさ」の平均値として牽制し、「死活」や「攻め合い」の戦闘力の比較によって行われています。

棋力の評価も、部分的な戦いの能力を基本として、全体として地の増減を判断できる力として比較することになります。

この2つに共通する考え方は、「生きる力」「石を取る力」が、戦いによって「地の増減」への力となるのです。

7 戦略と戦術と制約

部分的な戦いの準備としては「制約する」「攻める」という考え方が、戦略や戦術として用いられ、互いに相手の構想を阻止することで、争点が集約明確化されていきます。

争点の明確化によって天王山の戦いへの準備が完了し、はじめて戦いの開始となります。そして戦いの結果から新たな石の強弱関係が生まれ、地の増減に差が生まれることになります。

8 関係価値と可能性の限界

9つの価値の中心価値は、「可能性」「確定性」「危険性」の3つですが、他の6つの価値は、この3つに間接的に影響する関連価値として存在しています。

効率として重要なことは、この間接的な関連価値が、基本価値にどのように影響するにあります。戦略や構想、戦術の目的もその有効性の評価になります。

9 囲碁理論によって制約条件を知る

囲碁での構想や戦略や戦術のおける着手の選択は、決して無限の可能性があるのではなく、勝つための条件として、数多くの法則と制約条件によって限定されていることを認識しなければなりません。これらの制約は、「利用空間の広さ」による制限として生まれ、そのことが、序盤、中盤、終盤における構想条件になっています。

10 地の効率と生きの効率

効率とは、「地の増減」のことであり、

  1. 生きが確定するまでの未確定な状態
  2. 生きか確定した状態

として2つのパターンで評価できます。 

(1)未確定な状態で生き

  1. 生きるまでの効率
  2. 生きさせない効率

(2)確定した状態での生き

  1. 生きた石の効率
  2. 取れた石の効率

になります。