囲碁理論の入門講座

囲碁理論を学ぶ

入門とガイダンス(9) 形と筋

1 形とは、そして筋とは

 囲碁における重要な価値に、「形と筋」があります。この知識は、必然という読みの力と同等に重要なのですが、形とは何か、筋とは何かについて、書かれた本はありません、このため、形の理解は非常に困難なものになっています。

形が重要である理由としては、囲碁の特性として

  1. 戦いの効率は、形を作ることが中心である。
  2. 形は、戦いの準備であって、戦いそのものではない。
  3. 着手の90%以上が形と筋の生成で構成されている。

さらに、戦いでの形の効率は、攻めの連続性、地の生成の連続性、相手の連続性を阻止するなど、連続性という概念に大きく影響受け、これらは、構想の自由性、形勢判断にも大きく影響しています。

2 部分的な形の評価と悪手

部分的な形の評価には、悪手や着手ミスと共通したものがあり、

  1. 先手が取れるのに取らなかった。
  2. 打つ必要のない無駄石を打ってしまった。
  3. 攻め過ぎて、相手の石を強固にし、攻められなくなった。

などの理由によって、形が評価されています。

3 2つの異なった形の価値

従来の形の概念には、

  1. 地の効率としての形
  2. 戦いの効率としての形

の2つの異なった考え方を混同しており、またさらに実戦においては、「整形する」場合においても「必然の手順」が必要になります。

4 戦いの不確定性と構想での修正の必要性

 形が重視されるのは、将来の戦いの予想をある程度70%〜80%しか予測できないことにあります。つまりどのように戦いが展開されるのかを予想できないからです。これは定石の選択においても、やはり完全な予想ができないという公理と価値観があります。

このため、将来においては、相手次第での構想の変更が必要不可欠であるといえます。その一例が、必要以上に強固な厚みを作ってもそれが活用できなくなり、効果がない事実があります。

つまり、将来において有利になることが形の生成条件ではなく、不利にならない最低限条件、将来の変更に対する保険としての条件で、形が存在しているのです。つまり「損をしない」「着手ミスをしない」予防手段としての効果になります。戦いは必ず複数同時に進行するため、危険性の発生は避けられず、構想の調整において、形による余裕が必要であることになります。

5 どうして厳密な定義ができなかったのか

形の定義が今まで、厳密にできなかった理由には、形そのものが、全局的な戦いの一部であり、道具であるためです。このため、形を厳密に定義する前に、戦いの目的や価値が定義され、その後に2次的な作用として形を定義する必要があるからです。

またさらに、戦いの定義では、戦いの本質が着手効率と大きく関連するため、着手効率そのものを明確に定義できない限り、形や筋も定義できないことになります。つまり、結論としては、着手効率そのものが定義できていないことが、最大原因だったのです。

6 戦いの効率は、可能性であり確率性である

戦いでは、可能性、危険性と必然性の条件と影響が大きく影響します。この3つは、総合的な価値基準として「着手の自由性」、「構想の自由性」という概念に包括され

  1. 先行して大場に打てる自由性の大きさ
  2. 相手の攻撃に対して、対抗できる選択枝の大きさ
  3. 着手の連続性を獲得できる可能性の大きさ
  4. 自分の地として確保できる可能性の大きさ

になります。特に序盤においては、その可能性の大きさ重視され、
これらは確定効果ではなく、「可能性の大きさ」「危険性の大きさ」として、終盤以降の確定率の大きさになっていきます。

7 未確定な価値が制約の価値になる

対局では、終盤のヨセになるまで、自分が得られる価値が正しく評価できないことから、制約の大きさ、「自分が得られる価値ではなく、相手に得させない価値」によって評価されることになります。

この評価方法の利点は、「地を獲得する条件(要件)が、相手を強制する力の大きさに影響する」ことから、形勢判断においては

  1. 強制力と相手との相対的な可能性の大きさ、
  2. 勢力地から確定地になる確率

が評価値になっています。

8 筋について

形と筋とでは、その目的や達成確率が大きく異なっています。筋では、手順が明確であり必然性も大きくなります。例えるなら、シチョウは筋であり、ゲタは形になります。

9 結論

布石段階では、勝負は確定しているのではないのですが、形勢はかなり確定したものになっています。これらの確定の継承は、布石段階における可能性が、制約の手として継承され「形」として盤面に現れることになります。つまり、構想において制約価値が数多くの形となり、その組み合わせによって、緩やかに、修正されながら進行することになるのです。この形としての手順進行によって、可能性から確定性という評価に変化することになるのです。