囲碁理論の入門講座

囲碁理論を学ぶ

入門とガイダンス(1)

【まえがき】

囲碁の特性は、勝敗としては「地の大きさ」で決まるのですが、効率の本質は、「地を囲う効率」ではなく、「地を囲わせない効率」だったのです。この囲わせない効率が「制約する」という対局意識と価値観になります。この「囲わせない」という「制約意識」は、逆に上達に必要な数多くの法則に気づけるようになるのです。

ゲーム理論として、囲碁の着手効率を科学的、論理的に考察すると、今までの考え方の問題点と矛盾に気づくことができます。

「地を囲う」という従来の学習意識は、上達にとって数多くの弊害を生み出しています。つまり、この間違った考え方にこそ、囲碁の上達や普及への大きな阻害になっているのです。また、有段者や上級者が「囲碁理論は難しい」と感じる最大原因が、この従来の間違った意識にあるのです。

命題1 棋力とは、着手ミスを咎める能力である 【有段】

着手ミスを咎めないと効果はなく、悪手にできない。

勝負の効率には、「制約する」「着手ミスを咎める」の2大効率があります。

命題2 一手で咎められないことが、制約の効率を作る。【全体】

着手ミスを咎める場合に、級位者の場合は、「一手で相手の石を取る」とい手段が成立するのですが、有段者や高段者になると、一手で「相手の石を取る」、「地を減らす」などの成果が得られないことから、「制約する」という方法によって成果を得ることになります。

命題3 咎める手のほとんどが制約の手になる  【高段】

相手が着手ミスを打っても、咎められないと勝つはできません。この咎める手の多くは、制約する手になります。

相手の着手ミスを、「一手で咎める」ことができる場合はほとんどなく、場面毎に徐々に相手の形を崩す、生き難くさせる制約の手によって咎めることしかできません。これが形勢差となり、棋力差になります。

命題4 本来、石は絶対取られない。      【初級】

シチョウとゲタ以外に、相手の石が取れる基本動作はありません。これらに共通しているのは、手数が伸びない状態になっていることです。

1つの石を取るのに、4つの石が必要であるため、原則的に相手の石を取ることは絶対にできません。また、中央の石が取れる場合は「シチョウ」と「ゲタ」でしか、石は取れません。つまり、逃げる手を見損じがなければ、石は絶対に取られません。

命題5 対局での効率とは           【初級】

対局条件は、@ 攻めながら守る A 石は取れない B 地を囲えない。という3つがあります。

構想では、打った石が無条件に取られると、どのような目的であっても達成はできません。しかし、基本的には、石は絶対に取られないため、「攻めながら守る」ように打つことで、戦いを有利にすることができます。石が取られる原因は、着手ミスを相手から咎められた場合のみになります。このため、上達の原点は、いい手が打てる勉強はなく、相手にいい手を打たせないことが第一になります。

命題6 ほとんどの手は、制約する手である。 【上級A】

一手で、相手の石を取れない場合は、「生き難くくさせる」または「地を囲い難くさせる」という制約の手になります。

自分から地を囲おうとすると、相手へ効率のいい「邪魔をする制約の手」を与えることになり、勝てなくなります。

制約するとは、「相手を勝ち難い状態」にすることをいいます。逆に言えば「自分が負けにくい状態」にすることであり、「形勢が不利にならない」状態にする手になります。

命題7 相手を「制約する」ことを効率という  【全体】

「制約する」という考え方が、基本概念になります。

囲碁は、どこにでも自由に打てるため、制約や法則がないと思われがちですが、それは大きな間違いです。勝つためには、序盤での制約は何を優先すべきか、中盤での制約とは何か、その結果、将来どのような戦いが起こるのか、知っておくことが必要です。

命題8 効率とは、制約から生まれる。     【有段】

完全に生きた状態になるには、数手の石が必要であり、生きるために連続して打てないめ、制約が有効な手段になる。

形勢を優位にするには、相手への「地の制約」「生きの制約」が必要であり、相手の着手ミスを咎める場合にも、「形を崩す」という制約手段が有効になります。制約では、「相手の手対して自分の手を適応させる」ことしかなく、中盤以降での、「絡み攻めで勝負を決める」場合でも、準備としては、序盤から中盤までに、相手の石を「生き難くする」という制約が必要になります。

命題9 実戦で制約の手とは…        【有段】

制約の手は、すべての手が対象になる。

地を囲う、攻める、守る、打ち込む、生きる、捨てる、取らせる、しぼる、利かすなどすべての手が、形勢がよい場合には、制約する手として評価され、形勢が悪い場合には、制約された手として評価されることになります。このため、打たれた形ではなく、打つ目的で評価されることになります。この打つ目的と理由の理解が。学習ポイントになります。