囲碁理論の入門講座

囲碁理論を学ぶ

入門とガイダンス(2)

【まえがき】

「地を囲うという理想形を追求する」従来の学習意識は、上達にとって数多くの弊害を生み出します。この間違った考え方によって、囲碁の上達や普及に大きな阻害を生み出しています。また、有段者や上級者が「囲碁理論は難しい」と感じる最大原因は、この間違った価値観にあるのです。

囲碁の特性は、自分の有利な手と相手の不利な手の交換によって、形勢差が生まれるゲームになっています。そのため、有利な手や不利な手とはどのような手であるかを知る必要があります。

有利な手とは、自分にとっては「地が囲い易くなる手」「生き易くなる手」をさし、相手にとっては、「地を囲い難くする手」、「生き難くする手」になります。不利な手は、全くその逆の手を意味します。ここで注意すべきは、本手の多くは「難くする」「容易にする」という可能性の大きさを測る手であって、直接的に大きく「地を囲う手」、完全に「生きる手」ではありません。この直接的な「生きる手」や「地を囲う手」は、効率の悪い手になるのです。

命題1 「知る」「感じる」「見る」      【全体】

どうして、理論の勉強が、必要であり効果があるのか。

囲碁の勉強では、高段者の対局を「見る」勉強がベストなのですが、「見る」ことによって棋力が上がる人と、上がらない人がいます。つまり、「あ、そうか」「なるほど」と感動し、その意味に気づける人は、「あそうか」と思えた回数に比例して、早く一気に上達できることになります。つまり、勉強で大切なのは、この「なるほど」と気づける回数になります。それは、この本を読んでもまったく同じです。

命題2 強い人の碁ほど簡明である      【全体】

強い人の碁は、打った理由が明確であり、ほとんどの手が「制約する」という考え方で、打っています。

弱い人が、「強い人はいろいろなことを考えているいので理解できない。」と言うのをよく聞きますが、それは理論の勉強をしない人の言い訳であって、わからないのは自己流で打つからであって、このような人は、いつまでたっても上達の見込みはありません。本当は、高段者の碁ほど、打つ理由が明確なため、誰でも理解できるものになります。さらに、プロの打った手は、必然性が高くなるため、よりその意味がわかりやすい手といえます。

命題3 自分で「なるほど」と思える勉強がよい 【全体】

級位者が、自分でいい手を見つけることは、ほとんどできません。しかし、なるほど「いい手」だと思うことは可能です。

なるほどと思うには、効率のいい手、悪い手になる理由を勉強する必要があります。理由がわかるようになると、どうしてそこに打たれるのかが解かり、どのタイミングで打てばいいのかも解かるようになります。このことで、一気に強くなることになります。このため、弱い人ほど数多くのプロ同士の対局をみることで、強くなれるはずですが、「なるほど」と思えないため、これが全く無意味になっているのです。さらに、単に形を覚える勉強によって、石が取られやすく、つぶれやすくなる弊害が起こっています。

命題4 構想は、絶えず微調整する必要性がある 【上級】

相手の動きにあわせる必要性は、互いに相手の構想を阻止し合うことでしか、効率が生まれないからです。このため、構想では絶えず微調整が必要になります。

優勢を保持するには、相手の動きにあわせ、相手の構想を徐々に阻止することで、効率が生まれます。このため、大きな構想の流れは変更しなくても、絶えず微調整が必要になります。相手の変化や手抜きに対応できなくと、打ち過ぎになります。

命題5「読みきれる」場合には、構想は変わる。 【中級】

制約する手は、読み切れない場合の手であるため、読みきれる場合には、構想もすべて大きく変わります。

読み切れるというのは、「殺せた」「取れた」「生きた」という結果がわかることを意味します。このような場面は、隅や辺では起こりますが、中央ではなかなか起こりません。

命題6 地を囲うのではなく、自然に地になる。 【高段】

構想は、相手の考え方によって、互いに制約しあって変化しながら進行しています。

「地の生成」は、基本的には戦いの結果、石が強くなることで地になるのであって、自分から意図的に地として囲いません。

例外としては、序盤における構想として「地模様」を作り、それが地になる場合や、終盤において、先手が生まれ、効率よく地を囲う条件が生まれた場合には、意図的に地を囲うことが生じます。

命題7 互いに構想ミスや着手ミスを咎める  【有段】

相手の着手ミスを咎めないと効果はなく、効率にならない。

着手ミスを咎める手段は「一手で咎める」という手段はほとんど成立しません。このため場面が徐々に確定することで、制約した手が効率として蓄積され、死活の手になり先手になる。つまり、相手の構想を制約することで、効率差が生まれることになります。

命題8 構想ミスが減らないと、強くならない。 【高段】

構想とは、未来を予測する能力のことです。予測するには理論における制約の知識が必要で、このことで構想ミスのない手を打つことができるようになります。

囲碁における知識の多くは、相手の理想形を阻止する手段として必要な知識であって、自分からそれを得ようとする目標知識ではありません。強引に「地を囲おうとする」とそれが無理手となり「着手ミス」となり、相手に咎められることで負けるのです。