囲碁理論の入門講座

囲碁理論を学ぶ

第1章 理論を学ぶ目的

命題1  理論とは

理論とは、
どのような考え方で、次の手を見つけるのかという、
構想を立てる「制約基準」(法則や公理)のことです。

1 どこにでも打てるゲームですが

1囲碁は、どこにでも自由に打てるため、法則がないと思われがちですが、それは間違いです。 2勝つためには、どのように打つのがいいのか、何を優先すべきか、どのようなことが起こるを、知識として知っておくことが必要です。3なぜなら、これらの知識と条件にしたがって、ゲームは進行し、勝敗が確定しているからです。4正しい手や考え方から離れるほど、効率の悪い手を打ってしまいます。

2 正しいかどうかの判断

5場面において正しい手かどうかは、必ず検証する必要がありますが、6法則に従っていない正しい手はほとんどなく、法則を知ることで、自分自身で正しい手であるかどうかがわかるようになります。

7これらの法則を知る場合には、法則の言葉だけでなく、その法則が生まれた原因を知る理論勉強が必要になります。8この理論勉強は、必ず一度だけは勉強する必要があります。9関心があれば、誰でも自分で気づくことができますが、強くならないとその法則に気づくことがほとんど不可能だからです。

命題2 勝つための法則

勝つために、第一に注意すべきことは、

  1. 打った石は、動かせない。
  2. 無条件で取られてはいけない。
  3. 終局までに生きなければならない。

という3つの法則です。

3 3つの基本条件

1これは絶対に遵守しなければならない第一条件であるため、この条件下での工夫が必要になります。2また、これらは当たり前のことで、地を囲う場合にも、囲おうとする石が取られると、地を囲うことができません。3つまり自分がここを、地にしようとする場合は、その石は絶対に取られてはいけないのです。

4 疑問と矛盾

4でも、ルールとして石を取るルールがあるし、5対局では石が取られる事態が起こります。6これと法則は矛盾するのではないのかと思われるかもしれません。7実は、このような疑問を持つこと、疑問に気づくことが、理論を学ぶ上で大変重要なのです。

公理 矛盾する2つの法則は、法則としては存在できない。

5 解釈が間違っている

石が取られるのは、囲碁に対する考え方が間違っているのです。その間違いの第一原因が、「自分の石が取られる」ことと、「相手に石を取らせる」ことを間違って理解しているからなのです。

命題3 着手ミスによって石が取られる

自分から着手ミスをすると例外が起こります。つまり、自分の石が取られたり、また相手の石が取れたりするのは、 理論に反した着手ミスによって生まれているのです。

6 着手ミスとは

1着手ミスには、手順ミス、構想ミス、検証ミスの3つがあります。2着手ミスとは、「取られないと思って手を抜くことで石が取られる」ことをいいます。3また「受ける手を間違った場合にも石が取られる」ことが起こります。

7 強くなると着手ミスは減る

4このため、強くなるとミスの手を打たなくなり、着手ミスの数が減り、石が取られることはなくなります。5つまり、単純なミスがゼロになった人が、有段者であるといえます。

8 構想ミスと囲碁理論

6構想ミスを減らすには、将来がどのようになるかを予測できる力が必要になります。7その予測が、法則と矛盾した場合に構想ミスが起こります。8構想ミスが起こると、取られてはいけない石が取られるという事態となり、負けることになります。9構想ミスが起こる原因でもっとも多いのが、10見合い条件による絡み攻めの判断ミスになります。11有段者の石が取られる原因のほとんどが、この絡み攻めによる判断ミスで生じています。

命題4 将来を予測できるのか

手順が30手を過ぎると、勝負は予測できる。
このため、理論的にはどちらが勝つかは確定しており、正しく打てれば、形勢の逆転は起こりません。

9 囲碁の特徴

1級位者の方は、びっくりされるかもしれませんが、これが囲碁のゲームの特徴になります。2ただし、これは正しい手で対応できればという条件が付いています。3このため、人間の場合には99%正しい手の対応ができないゲームであるといえるため、形勢逆転が可能になっています。

10 どうして勝負が確定してしまうのか

4勝敗の確定は、理論から説明できるのです。5その第一理由は、

法則1 着手価値が手順の進行によって減少する。

という絶対法則があるからです。6このように断言すると「いやいやそうではないよ」といわれそうですが、反対意見の多くは、着手ミスによる損失の危険性と、構想によって得られる着手価値とを混同し、誤解していることから起こっています。

11 勝負の多くは、着手ミスが悪手になることで決着する。

7負ける原因の99%は、

法則2 自分の着手ミスを相手が咎めたことで、悪手になる

ことで起こっています。8咎められないと着手ミスは悪手にはなりません。このことが非常に大切な知識になります。

命題5 構想ミスを減らすことが、棋力アップになる。

構想ミスを減らすには、将来を予測することが必要になり、予測は理論的には可能ですが、それを実現する手を見つけることが、非常に難しいゲームになっています。

12 将来の予測が可能な理由

1将来予測を可能にしているのが、命題2の3つの制約条件になります。もちろんこの3つがすべてではありませんが、2この条件が、着手選択において、重くのしかかっています。

13 大石が取られると勝てなくなる。

3大石が取られるのも、着手ミスが原因ですが、4勝敗が決まる最大理由は、

法則3 最善の構想によって得られる利益が非常に小さく
失敗によって失う損失が大きい。

ことがあります。5もう一つは法則1の着手価値の減少が原因しています。6この2つの法則があるため起こっています。7このため、序盤における布石が非常に重要になります。布石の初期段階であればあるほど、構想の修正が容易になるからです。

14 一手の価値は減少する理由

8一手の価値が減少するのは、地を囲う可能性がゼロになることが原因しています、9このことは、着手価値は「地の増加」の可能性価値によって大きく制約されていることになります。

これが、囲碁理論という考え方になります。
この考え方の基本の価値観と考え方は、

  1. 制約条件とは何かを考える。
  2. 制約条件を満たす手を、正しい手として選択する。
  3. 制約条件を満たさない手は、着手ミスになる。
  4. 着手ミスは咎められると悪手になる。
  5. 悪手になると、損失が生まれ勝敗に大きく影響する。

という流れになります。
 このため、囲碁理論では、

  1. 着手効率としての絶対的な基本となる価値
  2. 着手ミスがどうして生まれるのかの理由
  3. 着手ミスを判別できる能力
  4. 相手のミスを咎める能力

になります。以降の章では、ゲームルールから生まれる効率の法則と、最善手となるための制約条件について述べることにします。