ゲーム学会(平成24年7月21日)

囲碁ゲームの理論体系

第1章 囲碁の基本ルール

基本ルール

19路の盤上に、黒白の石、交互に置いてゲームする。(連打はできない)

  1. 相手の石を囲うと石が取れる。
  2. 生きられない石(死石)になると、終局時に盤上から取り除かれる。
  3. 盤上に置ける石数の多い方が勝ちになる。(地の多い方が勝ちと同じ)

ゲームの特徴

  1. 一手の価値は、スタート時点が最大で、打つごとに減少していき、ゼロになると終局。
  2. 終局までに使用する黒白の石数は、同数(もしくは黒が1つ多い。)
  3. 終局では、すべて生きた石だけになる。(確定する)
  4. 大石が取られると、勝負が確定する。
  5. 単純な手では、石は取れない、殺せない、地は囲えない。

棋力差の原因

  1. ミスの量が多い人ほど弱い。
  2. 死活の知識量に差がある。
  3. 死活を解くスピードに差がある。
  4. 囲碁理論の知識がない。
  5. 棋譜が記憶できない。
  6. 先手後手の判断能力に差がある。
  7. 相手の手に、反発や手抜きができない。(受ける)
  8. 戦いの争点がわからない。
  9. 悪手や緩手がわからない。
  10. 攻める(相手をより有利になる)意味がわからない。
  11. ぎりぎりの状態で守れない。
  12. 中央での戦いで勝てる者が強い。
  13. 厚みを攻めに利用することができない。
  14. より大石を取ることができるものが強い。

第2章 囲碁のゲームとしての基本特性

囲碁における基本概念の確定性、制約性、効率性の3つの概念について説明します。

3つの確定

確定性とは囲碁における最大の特性です、確定性とはゲームにおける不可逆的な特性であり、この特性によって、形勢差と終局が生まれます。

  1. 生きの確定………… 効率よく生きる条件  
  2. 地の確定(死の確定)…確定地の定義条件
  3. 勝敗の確定…………… 形勢判断と勝負手

3つの制約

囲碁での必然性は、制約条件によって生まれます。制約条件によって、構想での必然性が生まれ、読み筋が生まれ、必然の流れが生まれ 「全体、部分の効率差」が生まれます。

  1. 生きなければいけない制約
    生きる戦いの条件と捨石の効率性
  2. 部分的な効率の制約
    先手、利き筋
  3. 全局的な制約(勝つための構想の制約)
    形勢判断と勝負手、構想の自由度

基本、部分、構想の3分類による効率性

着手効率には、「ゲームルールから生まれる」、「部分的な戦いから生まれる」、「全局的な石の流れから生まれる」の3つ種類があります。

(a) ゲームのルールから生まれる基本効率

  1. 形の効率…… 立体形よる優位性
  2. 場所の効率… 中央、辺、隅などの場所による優位性
  3. 必然の効率… 先手の優位性

(b) 部分的な戦いから生まれる戦術効率

  1. 戦いの効率… からみ攻め、もたれ攻め、見合いでの効率性
  2. 厚みの効率… 定石の選択、打ち込みなどの効率性
  3. 生きの効率… 生きる形の差による効率性

(c) 全局的な石の流れによる戦略効率

  1. 地の可能性と確定率
    地の可能性が確定地になる効率
  2. 連続性の効率
    先手の連続による効率のこと
  3. 構想の戦いによる効率
    戦いの流れによる効率のこと

棋力差の傾向は、低段者ほど(a)が重視され、高段者になると(c)の効率差の影響が大きくなります。

第3章 確定性と構想要件

(1)3つの目的達成スピードの違い。

構想における、目的達成スピードの効率差について説明します。

石は取られない
取る石数の方が取られるいより多い
地は囲えない
邪魔する方手は1手でOKである。
石は殺せない
殺す(囲う)石数の方が多い。

第4章 囲碁の基本構想(構想の条件)

碁の対局での意識の持ち方

碁の本質は、
地を囲わせないゲーム(科学的)である。  

(地を囲うゲーム(従来)ではない)

  つまり

  相手の地を、自分の地より小さく制限するゲームである。
(自分の地を、相手の地より大きく得るゲームではない。)

「地を減らす」「制限する」(中国ルール)

中国ルールでの勝敗は、盤上における石数で計算します。盤上で石が置ける最大数は361です。どれだけ自分の石がおけるかが問題になります。空間の大きさは、一手ごとにその可能性が小さくなります。有利に戦うには、自分の地を広げるより

  1. 相手の石が置ける空間を狭める。
  2. 相手の強い石には近づかない。
  3. 相手を小さく生きさせる。
  4. 相手の厚みをはたらかせない

ことを優先します。

形勢判断の評価方法

形勢判断において、構想の自由度が優劣の差となります。

構想の自由度とは

  1. 先手などの利き筋の多さ
  2. 確定地の量
  3. 地の可能性(量)と確定率

の3つの値の合計によって評価します。

第5章 囲碁の基本構想(構想の条件)

戦いが起こる予想力の差が、構想力の差になります。

1 戦いによる効率差

有利に戦うことで効率を上げる。

2 全局的な石の配置による効率差

布石(石の配置)で効率を上げる。

これらの考察で、戦いの本質が解明できます。

第6章 上達学習の基本とは(悪手と緩手を減らす学習)

悪手に気づく学習

囲碁で負ける原因のほとんどは、悪手や緩手を打ったミスによるものです。これらのミスを無くすと、アマ3段以上の棋力になります。

最善手は打てない。

最善手の判定は、最後まで正しく打ち続けることが必要なため、非常に困難で誰もできません。初手が100点であっても、途中で悪手を打つと、結果としての評価は、マイナス10点になるためです。

悪手と緩手の定義

悪手や緩手の意味を知ることで、今まで知らずに打っていた悪手が減ることで、棋力が上達することになります。

形勢判断で、失敗の原因を知る。

悪手である理由を知るには、自分なりに形勢を絶えず意識し、形勢が悪くなった原因を、つまり悪手を探す研究を行います。このため形勢判断の能力が棋力であり、悪手を見つける羅針盤になります

まとめ

  1. 囲碁は地を囲うゲームではなく、地を囲わせないゲームである。
  2. 形勢判断準には、すべて着手効率の基本要素が含まれている。
  3. 形勢判断準と悪手、緩手には、密接に関係がある
  4. 形勢が有利になる(勝負に勝つ)には、相手の悪手を咎めることが必要である。相手の悪手を咎められないと、得点ではなく失点になる。
  5. 自分からいい手を打つことのではなく、悪い手を打たない(ミスを減らす)ことで上達する。
  6. いい手とは、悪手を咎める手のことである。それ以外は互角の手しかない。
  7. 悪手、緩手、重い手、軽い手、攻める手、捨てる手、先手など定義の研究がでもっとも重要な理論研究事項である。
  8. 部分効率と全局効率とは、全くその計算式も内容も違うものである。
  9. 確定性、危険性、自由性、関連性、効率性、連続性、必然性、安定性、効率性の概念理解が必要である。
  10. 9から、効率性が生まれ、制約条件、石の流れ、構想の優位性が生まれる。
  1. 計算式
    一手の価値 = 確定地の増減 + 勢力地の増減 + 先手になる手の増減    
  2. 価値の+−効率
    +効率
    自分のプラス効率が増える。
    地が増える。生きやすくなる。
    危険性が下がる
    −効率
    相手のマイナス効率が増える。
    地が減る。生きにくくなる。
    危険性が高まる。
  3. 空間定義と認識
    (未確定ゾーン → 確定ゾーン)
    空間価値とは、着手価値を空間の領域として認識する方法である。囲碁ゲームは、未確定ゾーンが確定ゾーン(確定地)に変化し、黒白によって占有された確定地の大きさを競うゲームである。このため、この状態変化を理解することで、空間価値としての着手価値そのものの本質と効率が解明できることになる。

4つの認識の方法

(A) 占有価値ゾーン(支配の強さの認識)

戦いでの優位性や確定率の大きさによって、空間を分類する。

未確定ゾーン
近くにどちらの石もなく、未占有状態
勢力ゾーン
片方の石だけと接している。(勢力地)
境界ゾーン
反する勢力ゾーンの境界交差部分
戦闘ゾーン
黒白の石が接近し、戦いの交戦状態
確定ゾーン
黒地、白地としての確定地になった領域
ダメ場ゾーン
どちらの地にもならない確定領域

(B) 一手価値ゾーン

  1. 生きる手が打たれる空間
    生きるための眼形に必要な空間
  2. 地が増加する空間
    囲うことで地になる空間

(C) 戦いの争点ゾーン

死活の戦いが生まれることで、制約条件が生まれ、先手の連続性の価値が生まれる可能性のある領域

分断領域
切断、分断によって、死活が生まれる
不安定生きの領域
狭くなると生きる手が必要になる空間
攻め合いの領域
攻め合が生まれる可能性の空間
からみ攻めの領域
絡み攻めの戦いが生まれる空間
打ち込めるの領域
相手の勢力内であるが、打ち込んで生きられる空間

(D) 空間価値の重複

複合空間ゾーン
2つ以上価値が空間価値が重なっている領域
単一価値空間ゾーン
1つだけの価値空間の領域